#misskeyworld — Public Fediverse posts
Live and recent posts from across the Fediverse tagged #misskeyworld, aggregated by home.social.
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Since @[email protected] seems unable (or unwilling) to understand that many users desire the #FediVerse to be a place where opt-in is the normal and expected implementation for features such as #relays I propose that #fedidevelopers take up this call.
The problem: the implementation of relays lacks sufficient user-based controls. While users may (at least on platforms such as GotoSocial) add relays they desire to have their content sent to, there are no user based controls over relays configured at the instance level.
The current implementation appears to have unintended, and unconsidered consequences associated with it.
Ban evasion can likely be achieved through chaining relays together. We have already seen the unintended consequence of a relay following tags.pub leading to content being relayed non-consensually.
Something that has not been considered is potential damages to users in regions where political, social, or religious beliefs are sensitive topics need to maintain tight controls over where their content is sent. This is a case where the handling and relaying of posts needs to be 100 percent bulletproof.
The Solution: all platforms in the Fediverse should implement instance level relays in the following manner:
- Instance level relays are disabled for all users on that instance.
- User settings provide a list of the relays provided at the instance level.
- Users can opt to leave the relay(s) disabled, or
- They can choose to enable the relays they trust their content being sent to.
Through this implementation we avoid clunky workarounds like adding hashtags to profiles. Also, we make this feature more discoverable for new users who are unfamiliar with the conventions of the FediVerse.
I am unfamiliar with the #FEP submission process and requirements. Anyone willing to work with me on this, I would like to see this brought forth as a FEP.
#fedideveloperverse #fedideveloper #mastodon #gotosocial #misskeyworld #misskey #pixelfed #microdotblog #pleroma #sharkeydev
@alice @admin @gotosocial @Gargron -
Since @[email protected] seems unable (or unwilling) to understand that many users desire the #FediVerse to be a place where opt-in is the normal and expected implementation for features such as #relays I propose that #fedidevelopers take up this call.
The problem: the implementation of relays lacks sufficient user-based controls. While users may (at least on platforms such as GotoSocial) add relays they desire to have their content sent to, there are no user based controls over relays configured at the instance level.
The current implementation appears to have unintended, and unconsidered consequences associated with it.
Ban evasion can likely be achieved through chaining relays together. We have already seen the unintended consequence of a relay following tags.pub leading to content being relayed non-consensually.
Something that has not been considered is potential damages to users in regions where political, social, or religious beliefs are sensitive topics need to maintain tight controls over where their content is sent. This is a case where the handling and relaying of posts needs to be 100 percent bulletproof.
The Solution: all platforms in the Fediverse should implement instance level relays in the following manner:
- Instance level relays are disabled for all users on that instance.
- User settings provide a list of the relays provided at the instance level.
- Users can opt to leave the relay(s) disabled, or
- They can choose to enable the relays they trust their content being sent to.
Through this implementation we avoid clunky workarounds like adding hashtags to profiles. Also, we make this feature more discoverable for new users who are unfamiliar with the conventions of the FediVerse.
I am unfamiliar with the #FEP submission process and requirements. Anyone willing to work with me on this, I would like to see this brought forth as a FEP.
#fedideveloperverse #fedideveloper #mastodon #gotosocial #misskeyworld #misskey #pixelfed #microdotblog #pleroma #sharkeydev
@alice @admin @gotosocial @Gargron -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、リアクションシューティングガールと、令和の梅雨の話]
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りは6月のじっとりとした曇り空の下、今日もミス廃たちの日々がつぶやかれたノートが車道を走り、それに向かって歩道のミスキストたちが思い思いのカスタム絵文字を投げ込んでリアクションを楽しんでいた。
一方で、.ioのローカルの歩道には必ずと言っていいほど意気消沈したミスキストがいる──それはSNSの常のこと──けれど、そんな寂しそうなひとを、放っておけないミス廃もここにいて。
表通りに面したカフェテラスのテーブル席から、ローカルタイムラインを見渡しているピンク髪の少女。アシンメトリーのツインテールにフリルが豊かな地雷系の装いで、しかし足元のブーツはウエスタン風味が混じり、腰の太いベルトの両脇にはホルスターに差さった2挺の虹色のリボルバーが艶めいていた。
ピンク髪の少女はすっと椅子から立ち上がると、リボルバーの1挺を抜いて表通りに向かって発射した。乾いた破裂音が響いたが、それは人を殺める銃ではなく、カスタム絵文字を発射してリアクションを誰より速く相手に届けるための「抱擁の銃」だった。
銃口の向こうで身を捻ったのは分厚いメガネの、本当にカスタム絵文字みたいなオタク青年だった。青年はリアクションした主に気づくと、少女に向かって控えめに手を振った。ピンク髪の少女はサムズアップで応えて、満足げに椅子に座った。
「お見事、雑賀朔センセ」
テーブルの向かいに座っていた私が軽く拍手すると、雑賀朔と呼ばれたピンク髪の少女はリボルバーをホルスターに仕舞いながら、八重歯を見せて微笑む。
「おうよ任せとき」
こうやって雑賀朔はミスキストたちの心の傷を清潔な布で庇うようにしてカスタム絵文字の弾丸を打ち込んで、リアクションという電子の抱擁で優しく包み込むひとなのだった。
「うー、寒いんだか暑いんだかわかんないねしかし」
テーブルのアイスココアも、雑賀朔の額も汗ばんでいたが、気温は夏日に達しておらず、しかしひたすら湿度が高かった。
「久しぶりに梅雨寒らしい梅雨寒なんだよな」
私が言うと、雑賀朔は三白眼をいっそう見開いて驚いてみせる。
「小林おじさんの若い頃っていっつもこんな感じだったの? 梅雨」
「そうだよ、紫陽花は雨に濡れているのが当たり前だった」
私がそう言うと、雑賀朔は鼻で笑う。
「くっさ。わたしたち生まれた頃にはもう地球温暖化済だったので知らんかった」
唐突に突きつけられた相手の若さに私は動揺してしまいそうになる。私がこの子と同じくらいのころはどんな風だったろうかと思いめぐらせながら、私は雑賀朔に訊く。
「若いなあ、来年が受験?」
「そうです」
私の問いに、雑賀朔はアイスココアをストローで一口、そして頷いてみせる。
「嫌なら答えなくてもいいけど、勉強のほうはいかがですか?」
デリカシーの境目を気にして敬語になりながら訊くと、雑賀朔は何のためらいもなく答える。
「勉強は嫌いじゃないから、今まで通りちゃんとやってれば大丈夫だと思う。あとは自分の体調とかメンタルとか」
「おお、すばらしい」
思わず私が感嘆を漏らしながらそう言うと、雑賀朔は少し首を傾げ気味に、虚空を見上げて続けた。
「たぶん、受験当日はお母さんもおばあちゃんとショートステイしてくれると思う、そのはず」
そのとき、湿った風が強く吹いて、テラス席のテーブルのグラスやカップを波立たせ、私と雑賀朔は少し黙ったりした。
「大変だな」
私が言葉を絞り出すと、雑賀朔はニッコリ八重歯を見せて笑って、またアイスココアを一口飲んだ。
「うん、大変。でもわたしおばあちゃん好きだから」
「みんなから言われてるだろうけど、偉いな」
私が感心しながら呟いた言葉に、雑賀朔は口元を歪めて返す。
「偉業って言いなよ、ここMisskeyなんだから」
そういえばそうだなと気付かされ、私は両手を合わせて握り込むと、両の掌のなかでカスタム絵文字をこねはじめた。そして出来上がった「極めて偉業」のカスタム絵文字を、目の前の雑賀朔に放った。
「受け取れっ」
私のリアクションを雑賀朔は胸元で受け取って、両手で抱くように身体に染み渡らせると、穏やかな微笑みでギャルピースしてみせた。
「イエーイ」
ローカルタイムラインの表通りの空は、暗い雲がいっそう分厚くなっていまにも降り出しそうなのに、そんな様子だけを見せながらまだ雨にはならずにいた。
「将来の夢とか訊いていい?」
私がそう訊くと、雑賀朔は椅子の背にもたれて伸びをするように暗い空を見上げた。
「なんだろ、介護とか、看護とか?」
そう言った途端、素早い動きでテーブルに身を屈めて、頬杖を突きながら私をじっと見据えて、雑賀朔は言った。
「まあ、普段は色んなところでそう言ってるけどさ、わたしだって、なんか、かっこいい夢、追いたいですよ。でも周りは色んなことが厳しいって言うし、世界のニュースは厳しいっていうし、戦争おわんないし、そういうの突っぱねてまでやりたいこと、見つかんないし」
小刻みに身を揺すりながら言う雑賀朔に、私は精一杯の励ましを試みる。
「『まだ』見つかってないだけだよ。焦ることないよ。なんにも成し遂げてない大人が言うのもあれだけど」
その言葉を聞いて、雑賀朔は眉間にギュッと皺を寄せて。三白眼で鋭く睨んだ。
「そういうふうに、優しい言葉かけてくれるひと、最後に必ず卑屈な言い訳で自分を下げるから、嫌いです」
言った途端、雑賀朔は唇を震わせて、私から目を背けた。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい」
「いいよ。大丈夫」
私は努めて平然を装ったけれど、反論は思いつかなかった。雑賀朔の指摘は私個人には鋭い事実だし、むしろ、そんな言葉を導いてしまった私の失態だとさえ思った──この負い目さえ、雑賀朔には惨めに映るのかも知れないけれど。
私は思い立って、また両手を合わせて揉み込む。練り上げたカスタム絵文字は、「いつもありがとう」。それを優しくテーブル越しに放ると、耳元から首筋の辺りでリアクションを吸収した雑賀朔に、私は言う。
「私の話し相手になってくれて、本当に、いつもありがとう」
それを聞いてこちらを振り向いた雑賀朔はバツが悪そうに笑ったあと、右のホルスターから虹色のリボルバーを抜いて、私の目前で発射する。
パカーン! と、「どいたま」のリアクションを脳天に打ち込まれて椅子から転げ落ちた私がニヤニヤと見上げてみせると、雑賀朔は破顔して叫んだ。
「お互いさまァ!」
そのとき丁度、ローカルタイムラインの表通りに晴れ間が差し込んで、湿った空気を吹き飛ばすような爽やかな風がカフェテラスのテーブルの数々をすり抜けていった。
#カフェテラスMisskeyio
#フェディバーシティ・コネクション
#リアクションシューティングガール
#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、ミスキーガールと、私の描いたエロ漫画の話]
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りでは豪雨と霧雨が繰り返されて、梅雨の季節が着々と近づいていることを知らせていた。傘を差して歩道を行くミスキストたちは車道を走るNERVやYahoo!ニュースのトゥートに一喜一憂しながら、手元でカスタム絵文字を練り上げて「ウワーッ!」「イーヤーヤダヤダ」などのリアクションをそれらの投稿に投げつけていた。
そんな様子を、私は.ioの表通りに面したカフェテラスの店内から眺めていた。雨が降り込めているから屋外のテラス席は撤去されており、窓側の席からローカルタイムラインの様子がよく見えた。
店内に向き直ると、窓に面したボックス席やフロアのテーブル席を囲んで、.ioの絵師たちの「代理ちゃん」や「うちの子」たちが朗らかに談笑している。なかにはタブレットを持ち込んで作画作業の真っ最中の客もいる。一時期に比べて、怪文書作家やMFMアーティストはあまり見なくなったかもしれない。
そのとき、ぼんやり店内を眺めていた私の目前に手をかざして、私を振り向かせたのは、このボックス席の向かいに座るひと。ブラウンのショートボブに丸眼鏡、ライトグリーンにホワイトのアクセントが鮮やかなミニのワンピースを着こなす、ちょっと意地悪そうな笑顔の女性。私は彼女のことを勝手に「ミスキーガール」と呼んでいた。
「はい、なんでしょう」
私が応じると、ミスキーガールは腕組みしながらこちらをじっと見据える。
「小林の描いたわたしのエロ漫画、消したでしょ」
私はその事実──ミスキーガールと私が同衾するエロ漫画描いて.ioのタイムラインにアップロードしたこと、並びにそのノートを消したこと──を隠していなかった。だから、私は深く頷いた。
「はい、消しましたね」
私の返答に、ミスキーガールは腕組みしながら肘を指で掻いて、フンッと鼻で笑う。
「ビビっちゃったんだ、Fantiaの動きに」
「はい、ビビりました」
私は額に汗をかいていた。私と同じくらい水滴で濡れたアイスコーヒーを一口飲み下して、私は姿勢を正す。ミスキーガールはいまだ腕組みを解かない。
「ここは、Misskey.ioで、ちゃーんと隠してたのに?」
ミスキーガールの瞳は湖の底のように透き通って輝いているけれど、私はいま彼女の厳しい視線を受け止めきれずに、俯きがちに返事していた。
「はい、.ioにアップしてたのに、ちゃんと隠してたのに、です」
そこまで言うと、ミスキーガールは腕組みを解いて、深いため息とともに、ボックスのソファに深く座った。
「まあ、いいけど」
そして、ミスキーガールは反動をつけてソファから立ちあがり、向かいの私の耳元に唇を近づけて、言った。
「わたしは好きだったんだけどな」
その吐息の湿度を耳たぶで受けた私は、身体中の血液が高速で循環するのを感じながら、貧血になりそうな脳でミスキーガールへの「弁明」を必死に練り上げる。
「私だって好きだった。精魂込めて描いたからね。でも、何と言うか、世界の流れに歯向かう勇気がないんだ。クリエイターとして弱いんだと思う」
私の反論に、ミスキーガールはアイスココアのグラスを指で拭いながら、首を傾げる。
「別に皆んながみんな反抗したくてエロ描いてるわけでも無いでしょ?」
彼女の疑義に、私はようやく自分でも腕組みして、言葉を探しながら返す。
「でも、みんな救いを求めてエロを描いている。性癖って個人の最も核となる救いなんだ。誰も傷つけずに節度を持って性癖に忠実であろうとするひとびとを、誰かが、多分大きな力で、潰そうとしている。それに対して私は、声を上げる勇気もない。そもそも強い性癖も持ち合わせない自分に、彼らと手を取り合って大きな力と戦う勇気もない。私はクリエイター失格だよ」
そこまで言って、私はアイスコーヒーを一気に飲み干して、深く息を吐いて黙った。そんな私の姿にミスキーガールはとりたてて驚くこともなく、首を傾げる。
「まあ、いじけるのはいつものあなたの調子だから、早めに戻って来て、としか」
そう言ってからアイスココアを一口、ミスキーガールは私に訊く。
「わたしとエッチしてたときのエロ漫画を描いてたとき、どんな気分だった?」
試すような笑顔で訊くミスキーガールに、私は少し思案してから、言った。
「作業のあいだ、やる事の多さに辟易して、技術の拙さをずっと突きつけられていたし、体調もいつも良かったわけでは無いし、正直、辛いときもあった。でも」
「でも?」
ミスキーガールの疑問符の視線を見つめ返して、私は真っ直ぐに答えた。
「結局はちゃんとネームのページ数を描きあげられた。君のお陰だと思う。大好きな君のお陰」
私の言葉に、ミスキーガール数瞬黙ったあと、ゆっくりと破顔しながら、言った。
「分かってるなら大丈夫。小林はちゃんとわたしを性癖にしてるクリエイターだよ」
Misskey.ioのローカルタイムラインの雨空は薄暗い昼間から忍び足で夜へと更けていき、街路灯の光が雨粒を照らして表通りはきらきらと輝いていた。ミスキストたちは次の晴れを待ちながら、また今夜もモニターの前に座って自らを「救う」ために、創作に励むのだった。
#カフェテラスMisskeyio
#フェディバーシティ・コネクション
#MisskeyWorld -
MHQ TV in Misskey World
#MisskeyWorld -
Misskey World内のアバター
色変えたり服着せたり顔変えたり上にみかん等のデコレーションを乗せたりできるようにする:tanuki_daradara:
#MisskeyWorld -
Misskey Worldのロビー設計してる
中央のメインスクリーンには任意の動画・配信を流せる
#MisskeyWorld -
CW: #リアクションシューティングガール #フェディバーシティ・コネクション $[font.serif 寒い夜に、身を寄せ合う仲間がいること]
今季随一の寒気団が押し寄せて、Misskey.ioのサーバーの街にも冬の一層冷え込んだ空気が吹き荒んだ。ローカルタイムラインの表通りを飛び交うリアクションも、抱きしめ合ったりお茶を差し出すカスタム絵文字が増えて、車道を駆けていくノート投稿のホログラムには鍋料理の飯テロ画像が押し寄せていた。
そんな表通りを横目に、3人の少女が夕方の路地裏に入っていく。裏道を入った先にあるカラオケボックスは、.ioの歌好きだけにとどまらず「安価に借りれる個室」として多くの人が「逃げ込む」場所だった。
ビッグスクリーンの部屋を案内された3人の少女たちは、寒さにかじかむ体をさすりながら、エレベーターを降りて突き当たりの部屋に入ると、手荷物をソファの上に放った。
「寒ーい! ボンちゃん脚寒くないの?」
ピンク髪にツインテールの「雑賀朔」──通称「リアクションシューティングガール」──がエアコンのリモコンをつかむ。
「めちゃくちゃ寒い。でもオシャレは我慢だし」
ボンちゃん、と呼ばれた銀髪に褐色肌の「凡百」──「エモジクッキングガール」とも呼ばれるMFMアーティスト──はそう答えて、絵文字のパターンが散りばめられたイエローが鮮やかなポンチョを脱いでソファに畳んで置いた。
雑賀朔が部屋の温度を上げながらファーコートをハンガーにかけて地雷系の装いを見せ、凡百がポンチョに合わせたデザインの絵文字だらけのアグリーセーター姿になるのを眺めながら、既にインバネスコートを脱いでツイードのワンピース姿になった「ツキレイ」──アカウント名「月が綺麗と言え」、またの名を「リプライシャウトガール」──が内線の受話器に手をかけて、二人に訊く。
「なに歌う? てかまずあったかいドリンク頼む?」
「わたしホットコーヒー」
雑賀朔が言って、凡百が続く。
「あ、ホットココアで」
二人の返事にうなずいた後、ツキレイは受話器を取ってフロントに言った。
「すいません、コーヒーとココアとダージリン、ぜんぶホットで一つずつお願いします」
注文が済んで、ツキレイは既にソファでまったりしている雑賀朔と凡百の並びに座った。
テーブルに対してずいぶん広い部屋は明らかに3人では持て余す広さだった。大型スクリーンではMisskeyのAI看板娘「藍ちゃん」が映し出され、アイドル衣装で手を振りながら「皆さんこんにちは!」と満面の笑顔で新しい楽曲の紹介を始める。
「なんか、歌う?」
そう言いながら、ツキレイはソファに据えてあったにゃんぷっぷー型のクッションを抱き寄せる。
「歌もいいんだけど」
雑賀朔は首を傾げながら言うと、凡百に向き直って訊く。
「ぎゅってしてい?」
雑賀朔の真っ直ぐな眼差しを受けて、凡百は柔らかく微笑む。
「どうぞどうぞ」
凡百が両腕を開いて胸を張ってみせると、ツキレイもぐっと二人に体を寄せて言う。
「あ、ずるい、わたしも」
「みんなでみんなで」
凡百はそう応えて、雑賀朔とツキレイを二人とも抱き寄せた。
三人とも冷たい頬を合わせて、ゆっくりと打ち寄せる互いの呼吸を耳元で感じとる。目をつぶって不揃いな鼓動を数えていると、体の芯から温かな血が新しく湧き出てくるような気さえする。それは確かに存在する記憶、互いが互いの体温と心音とで、懐かしい赤ん坊の頃の心地を思い出しているのだった。
「この前さ、リアクション誤射しちゃってさ、ちょっとへこんでたんだ」
三人でまとまるように抱き合ったまま、雑賀朔が小声で呟く。
「あるある、よくあるじゃん」
凡百が頬寄せたまま首を振り、雑賀朔もうなずく。
「うん」
するとツキレイが、引き寄せるように二人に顔を埋めて、言う。
「わたしもね、この前すきな絵師さんにリプライ送ったら、ちょっとぎこちない感じになっちゃった」
「でもブロミュされたわけじゃないんでしょ?」
凡百がそう訊くと、やはりツキレイもすがるようにうなずく。
「うん」
そうしてしばらく三人で抱き合ったまま、大型スクリーンでは餅付ぬるぽの新曲のPVが流れて、エアコンがようやく暖かい風を吐き始めたころ、雑賀朔が言った。
「いつもボンちゃんに受け止めてもらってばっかりだね。なんか、聞くよたまには。ボンちゃんの、悩み? 弱音? とか」
「そうだよ、遠慮なく言って」
ツキレイがそう続くと、凡百は唇をすぼめて、言う。
「そうだねえ」
一呼吸のあと、凡百は二人をしっかりと抱き寄せたまま続けた。
「クラスの好きな男の子が色白の女の子が好きらしくて。結構泣いちゃったんだ、昨日」
その言葉に、雑賀朔もツキレイはしばらく黙ってから、凡百の手のひらや頬や首筋の、褐色の肌を撫でてみせた。二人の手の慈悲を受け止めて、凡百はすこし、震えた。
「わたしは好きだよ」
雑賀朔の言葉に、ツキレイも唇を震わせて言う。
「わたしも好き」
凡百は黙ってうなずいたあと、頬を撫ぜる二人の手に自分の手を添えて握った。
「あったかい、朔ちゃんもツキレイちゃんもあったかくて、優しい」
その言葉に、雑賀朔もツキレイも微笑んで、凡百の頬を揉みはじめる。
「ボンちゃんもちもち」
「もちもち、きもちいいね」
二人のおふざけに凡百は笑って応える。
「もう、大好きになっちゃうよ」
「いいじゃん、大好きになっちゃえよ」
雑賀朔に言われて、凡百が潤んだ瞳で返す。
「もうなってる、いまなった──キスしてい?」
その問いに面食らいながらも、雑賀朔は微笑みを崩さない。
「え? ……んー、どうなっちゃうのかな」
そこにツキレイが入って言う。
「わたしもしたいよ、みんなでしようよ」
そして、3人して人生みたいな真剣な沈黙に包まれ、夢の中のように時間の感覚が狂い、三つの唇が作る三角形が徐々に小さく、近づいて行って──
コンコンコン! とドアがノックされた途端に、3人は素早く離れてソファに並んで座り、姿勢を正した。
「失礼しまーすお飲み物お持ちしましたー終了10分前にまた内線でお電話しまーす」
部屋に入ってきたカラオケボックスの店員はドリンクをトレーからテーブルに置いた後、3人に見向きもしないで部屋を去った。
スクリーンに流れる餅付ぬるぽのPVが終わって、再び藍ちゃんのトークが始まったところで、3人は誰からともなく爆笑して、ドリンクを手に取った。
「よしじゃあまず乾杯しよ!」
「だね! 私の失恋記念だね!」
「違うよ、新しい恋のスタートを記念してだよ!」
雑賀朔が、凡百が、ツキレイがそれぞれに声を張って、3人の手にしたカップが軽快な音で鳴りあったのだった。
「カンパーイ!」
Misskey.ioの街の夜が更けていくとともに、ローカルタイムラインの表通りを駆けていく風はいっそう冷えていき、夜の碧色が重苦しい曇り空から、いまにも雪さえ降りそうで──それでも、Misskeyにいる人々には魂の体温を確かめ合う仲間がいる。そうやってまた、今年も来年も次の冬も、ミス廃たちは手を取り合っていくのだった。
#MisskeyWorld -
CW: #リアクションシューティングガール $[font.serif 新総理就任の夜、それよりも大切なこと]
インターネットの宇宙の彼方から吹く風のなかに混じる血の臭いは、日に日に主張を強めながらSNSの街の住人たちに少しずつ「善く」「正しく」生きることを強いるようになっていた。それに屈した街の首長がおり、はたまた、どこ吹く風を装いながら必死に耐えている首長がおり――2025年10月段階ではまだFediverseの大地に立つサーバーの街の数々はその多様性を保ちながら、地平線の向こうからやってくる「未来の気配」に戦々恐々としていた。
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りに、新内閣の閣僚の名前を速報する特務機関NERVのトゥートが流れて来る。女性総理の就任に比べてあまり興味をそそられないのか、それぞれに投げかけられたMisskeyのリアクションの数は少ない。その有様をローカルタイムライン沿いに建つビルの屋上に立って眺めながら、雑賀朔は苦笑いした。それで良いと思ったのだ、Misskeyのリアクションはお祭り騒ぎを演出する花火の光、もしくは、寂しさを分かち合うための電子の抱擁だから。
眼下の表通りでは、 Misskeyの絵師たちの「代理ちゃん」「うちの子ちゃん」たちが歩道をハロウィンの仮装で闊歩して、車道ではしゅうまい君の投稿がひたすらリノートされていた。ビル群の壁面は巨大なデジタルサイネージになっており、ハイライトのノートが巨きく映し出されて、神絵師による美少女のイラストが放つ光が、日没の早くなった夜の表通りを淡く照らしていた。
そんなデジタルサイネージの上端、ビルの最上階の縁に立って、雑賀朔は探している、リアクションがいますぐ必要なひとを。
煙と馬鹿は高いところに昇りたがるのだと嗤われたことがあるけれど、雑賀朔はそんなことを気にしていたら大切なものを見逃してしまうと知っていたから気にしていない。いつだって偉人は馬鹿にされながら、それをはねのけて強くなる。だから雑賀朔は、Misskey.ioのサーバーの街でも見晴らしの良いところに昇って、リアクションを「撃ち込む」べきノートやユーザーを探しているのだった。
腰に二挺のリボルバー、肩から下げたボルトアクションライフル、どれも極彩色の虹色に染まったキャンディカラーの銃身で、「実弾」は撃てないが、カスタム絵文字のリアクションを撃ち込める「リアクションシューティング」専用の銃だった。
この装備を授けてくれた「師」はいま、アメリカで「戦って」いる。その力添えになりたいと雑賀朔は訴えたが、「師」は「Misskey.ioで自分の使命を果たせ」と言った。雑賀朔はその言葉を「師からの信頼」と受け止めて、今夜もMisskey.ioの街を見廻っているのだった。
「最近はローカルで弱音を吐く人も少ないかあ」
そう呟いて、雑賀朔はショルダーストラップで下げたスマホを眺めて時間を気にしてみる。68万ユーザー超のMisskey.ioにおいては、愚痴や弱音はフォロワー限定やチャンネルタイムラインに流れることも多くなった。
「誰かの力になりたいな、そんな気持ちもわがままかな」
鼻歌交じりにそう節をつけて言うと、雑賀朔はローカルタイムラインから移動しようとした、――そのときだった。
ローカルタイムラインの歩道の脇から、ぼんやりと車道を見つめて、立ち尽くしている女の子がいる。雑賀朔がもうファーコートを着込んでいるというのに、その女の子は白い半袖膝丈のワンピース一枚で、両手両脚にはびっしりとタトゥーが施されているのが遠目にも分かった。
雑賀朔はライフルを構えて、スコープを覗いた。タトゥーの女の子が、眉間に皺を寄せて虚ろな目で車道を見つめている――雑賀朔はいちどライフルを頬から離して、腰のベルトに差し込んであったカスタム絵文字の弾丸を「大丈夫?」「無理しないで」「ばっかお前…俺がついてるだろ」の順番で発射できるようにライフルに装填した。
ライフルを構え直したスコープの向こうで、タトゥーの女の子が車道へと歩を進めようとしていた。雑賀朔は迷わずリアクションシューティングの引き金を引く。「大丈夫?」がタトゥーの女の子の頭に的中し、身をよじらせる。レバーを引いて次弾を装填し、「無理しないで」「ばっかお前…俺がついてるだろ」を次々と的中させると、雑賀朔はライフルを片手でつかんで頭上高く掲げた。
リアクションシューティングを喰らって歩道に座り込んでいたタトゥーの女の子が、雑賀朔のリアクションだと気付いて、ビルの屋上を見上げる。タトゥーの女の子はしっかりと両脚で立ち、雑賀朔に向かって手を振った。数十メートルの距離を挟んで、雑賀朔とタトゥーの女の子が、確かに微笑みあった。
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りは平日の夜だというのに今夜も騒がしく、ユーザーたちのリプライとリアクションで溢れかえっていた。その混沌の隙間に沈み込んでいるユーザーを、雑賀朔は見逃さない。それは、自分がしてもらったことの恩返しだから。
ビルの屋上から降りようとしたとき、ファーコートの首筋を冷たい風が駆け抜けて、ひょっとすると明日からはマフラーが必要かもしれない、と、雑賀朔は身を縮めたのだった。
「秋はどこ行っちゃったんですかねえ、令和ちゃん」
#リアクションシューティングガール
#フェディバーシティ・コネクション
#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、ミスキーガールと、秋が来ない10月の話]
Misskey.ioの街はじっとりとした湿度を含んだまま10月の寒さを迎えた。ローカルタイムラインの表通りを行く.ioの絵師たちの「うちの子」たちは、ミニスカートの裾を気にしながらも長袖をまとって歩道に繰り出し、車道を駆け抜けるローカル投稿ノートにはハロウィンのイラストが少しずつ増え始めた。
サンダルから急にブーツの足元が増え始めた歩道を歩きながら、私はこれを秋とは呼ぶべきか迷う、きっと呼ぶなら「夏と冬の移行期間」だった。急な温度差に驚く身体をなだめるように買い食いしたベイクドモチョチョの包み紙を尻のポケットに押し込み、私は行きつけの、.ioのローカルタイムラインの表通りに面したカフェテラスに向かう。
最近忙しかった。未だにかなり疲れている、体の芯が凝り固まっているような感覚だった。奇跡的に生きている、みたいなことを本気で思ったりしている。
カフェテラスの看板が見えてきたところで、私は立ち止まって店の外観を遠くから眺める。店の前の歩道にテーブルを並べて作られたテラス席は、今日も客たちで賑わっている。
その中の一つのテーブル席、頭上に差さった大きな傘の下で昼下がりの光を避けながら、ひとりの女性が首を傾げている。ブラウンのショートボブに丸眼鏡の女性は、目の前のカフェオレのカップの縁を親指で擦りながら、テーブルで独り、ぼんやりと虚空を見つめている。グリーンとホワイトのボディコンシャスなワンピースの上から、同じカラーリングのブレザーを羽織って、ブラックのタイツの足元はやはりグリーンのヒールがエナメルの光沢を輝かせていた。私は彼女のことを勝手に「ミスキーガール」と呼んでいる。
美しいなと思う。
私は歩を進めてそのテーブルに向かった。数メートルほどの距離まで近づいたところで、ミスキーガールが気付いたのか、視線をあげてこちらを向いた。
「――小林!」
数瞬の吃驚のあと、満面の笑みを見せて、ミスキーガールは椅子から立ってみせる。私はそういうときに相応しい表情が分からなくて、思わず頭を下げてしまう。
「お久しぶり」
私の不自然な会釈を気にも留めずに、ミスキーガールは訊いてくる。
「お母さま、退院したんだって?」
ミスキーガールの目が潤んでいるようにも見えて、少しこちらも胸を締め付けられそうになる。
「ずいぶん体力は落ちてるみたいだけど、よく食べられてるし、コミュニケーションも問題ないし、いまのところ何とかなってるよ」
動揺を隠しつつ私がそう応えて席に座ると、ミスキーガールも応じるように座って、こちらをじっと見つめたまま質問を重ねる。
「小林は大丈夫なの? 体調とか」
ミスキーガールの宝石のように透明度の高い緑の瞳を見つめ返していると、私はここに戻ってこれて本当に良かったと確信する。
「まあなんとか」
そう答えて、私はフロアスタッフのメイド服の子に抹茶ラテを頼んだ。
それから私とミスキーガールは、私たちが会えなかった先月のことを話した。私は母の入退院と、その間に初めてちゃんと「家事」をやって思い知らされたことをたくさん話した。ミスキーガールはMisskey.ioとFediverseで起きていたことと、彼女が好きなクリエイターと、表現規制と、世界情勢のことなんかを。
夕日が傾くローカルタイムラインの表通りの車道を、特務機関NERVのFediverseサーバーから配送される政党人事の速報トゥートが走っていく。それを横目に一瞥して、ミスキーガールがため息を吐く。
「どうなっちゃうんだろうね、これから」
「希望を捨てちゃいかんよ」
ミスキーガールの憂いのつぶやきに、私は反射的に即答していた。
「希望を捨てちゃいけない。私は若い頃、不登校だったし自殺未遂を何回もした。でも私の母は私を諦めなかった。私を信じてくれていた。結果的に大人物になれた訳ではないけれど、今回の母の入院で、私は母をサポートしたし、これからもサポートしていくと思う、そういう存在にはなれたはずだ。だから私たちもやっぱり、諦めちゃ駄目なんだ、誰かを、日本を。自分がここまで生きてきたからこそ、これからの未来を信じることって必要なことだと思う」
そのとき私は大真面目だったけれど、目を丸くしてこちらを見つめるミスキーガールの表情に正気に引き戻されてしまう。
「だいぶ飛躍しているかな」
私は俯き加減に首を傾げてしまう。するとミスキーガールがぶんぶん首を振ってみせる。
「いや、でも解る気がする、うん。諦めちゃ駄目だよね」
ミスキーガールはカップを持って冷めきったカフェオレを唇に傾けると、自分自身に確認するようにして繰り返し深くうなずいた。
「そうだよ、わたしも諦めないよ、なんにも諦めない。特になにか頑張ってるわけではないけど、諦めないよ」
そう言ってミスキーガールが誇らしく微笑んで見せる視線を、私はじっと見つめ返して、しっかり応えるように笑い返してみせたのだった。
Misskeyには幸せになってもらいたい人が沢山いる。私はそんなMisskeyの役に立てるようなひとではないかもしれないけれど、せめても誰かに幸せを祈ってもらえるようなミスキストになれたらいいなと思う。
日没とともに店舗に設置された照明がテラス席を照らして、熱いダジャレ合戦を繰り広げる客たちの首筋を冷たく夜風が撫でるころ、NERVの速報トゥートがノーベル賞受賞者に日本人が選ばれたことを報じて、私はお替りの抹茶ラテを頼むのだった。
#カフェテラスMisskeyio
#フェディバーシティ・コネクション
#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio #リアクションシューティングガール $[font.serif 私と、雑賀朔と、「グチコボ・スミス」での話]
Fediverseの片隅で一人の少女が壮年の狙撃手から受け取った二挺のピストルは、露店で売られるキャンディのように虹色できらきらと輝いていた。その銃口から放たれるのはひとを殺める鉛玉ではなく、ひとの心に優しく溶けてひろがる電子の抱擁――「カスタム絵文字」の弾丸の「リアクション」だった。
Misskey.ioのサーバーの街は八月の終わりに向かっていたけれど、酷暑の日差しはまるで収まらなかった。ローカルタイムラインの表通りの車道を走るノートの数々に届くリアクションはいま、白々した光が照り付ける歩道から投げ込まれるものは少なく、日陰や屋内に避難したミスキストが打ち込んだリアクションが気泡のように各々の手元の端末から湧いて、表通りのほうにふわふわと飛んで行ってノートの上で弾ける、という様子だった。
その景色を眺める私の視界に入る風景もいつもとは違う。今日は行きつけのココアが自慢のカフェテラスではなく、アップルパイが看板メニューの「グチコボ・スミス」という店のイートインに入った。そして、普段なら私とテーブルを共にする女性は、ショートボブに丸眼鏡の女性――私が勝手に「ミスキーガール」と呼んでいるひと――なのだが、いま正面に座っているのは、ピンク色の髪をツインテールにまとめて、フリルやリボンが豊かな地雷系の服をまとい、その上から腰にウエスタンのガンベルトを巻いた、十代の女の子だった。
「いただきまーす!」
ダッチクランブルのアップルパイにフォークを入れるピンク髪の少女は.ioで「雑賀朔」と名乗り、腰に下げたキャンディカラーのリボルバーピストルからカスタム絵文字のリアクションを、タイムラインのノートやミスキストに撃ち込む「リアクションシューター」だ。誰よりも早く、誰よりも相手の心情に寄り添ったリアクションを撃ち込むことを信条に、雑賀朔は日頃からリアクションの「狙撃」に勤しんでいるのだった。
「美味しいかい?」
私も目の前のイングランドカスタードにフォークを入れながら、雑賀朔に訊く。
「めっちゃ美味いっす。なんか、ご馳走になっちゃって、ありがとうございます」
口の中のアップルパイを飲み下してそう答え、雑賀朔は頭を下げると、アイスコーヒーをストローでひと口、リップを気にしながら顔を上げ、こちらにニコリと笑ってみせる。私も微笑みを返してアイスコーヒーを飲み干し、そして尾崎放哉の顔をしたメイド服のフロアスタッフを呼んで、コーヒーのお代わりを頼む。
「小林さんはこのお店は初めてですか?」
雑賀朔の問いに、私は首を振って答える。
「テイクアウトで何回か来たことがある。他の店舗のイートインは入ったことあるけどこの店舗に入ったのは初めて」
その回答に、雑賀朔はすこし口を結んでから、重ねて訊く。
「『おじさま』は食べたことあるんですかね、ここのアップルパイ」
私と話すとき、雑賀朔は事あるごとに「おじさま」のことを気にする。雑賀朔にリアクションシューティングの神髄を教授した私の友人の狙撃手はMisskey.ioの街で自らを「リアクションシューター」と名乗って、いまの雑賀朔と同じように、リボルバーとスナイパーライフルで、励ましのリアクションをミスキストたちに「撃ち込んで」いた。
そんな彼がMisskey.ioからすっかり姿を消したのは、今年の初め頃――新しいアメリカ合衆国大統領が就任したころだった。
「無いと思う。オープンしたころには、『おっさん』はもう海の向こうに行ってたはずだから」
そう答えると、雑賀朔は少し寂しそうな表情を浮かべて、小さく数回うなずいた。そんな彼女に、私は質問を返す。
「忙しそうかい、彼は」
リアクションシューターの「おっさん」は、雑賀朔にだけは今も「二人だけのMisskeyサーバー」で会っているのだという。Fediverseの大地では各々のサーバーは街や家の姿をとって人々を迎え入れ、Misskey.ioなどの大きなサーバーは大都会の姿で私たちの前に現れるが、「おっさん」と雑賀朔のサーバーは、「おっさん」の故郷の山小屋の姿を取り、その周りには広大な森林が広がっているという。そのサーバーはFediverseとの連合を全く切っており、アクセスの手段はおっさんと雑賀朔の二人だけの秘密だという。
「精一杯頑張って、いまこんな感じなんだそうです。それと、自分は『元』アメリカ人としてアメリカのために『潜行』しているのであって、日本のためにじゃないからね、って、なんか、釘刺されました」
雑賀朔はそう言って深い息を吐いたあと、また目の前のアップルパイにフォークを入れる。
「それはまあ、そうなんだろうね」
応えながら、私は腕組みして、しばらく黙ってしまう。雑賀朔はその間に、アップルパイの最後のひと口を噛みしめて、アイスコーヒーを飲み干す。
「私たちにできることは、なんだろうね」
私の質問は心から漏れ出すように口からこぼれていたのだと思う。その問いかけに、雑賀朔は窓の外を眺めながら、遠い眼で答えた。
「身近な人を大切にしなさいって言ってました。相互さんにも優しくしなって。今までの生活の大事なことを変えないようにしなって。変えなくても済むように、俺は頑張るからって、おじさまが」
そのとき、私たちのテーブルの横にメイド服姿の尾崎放哉が現れ、柔らかな表情で私にアイスコーヒーのお代わりを差し出した。私はそのアイスコーヒーのグラスについた水滴を親指で拭いながら、雑賀朔と同じ方向、グチコボ・スミスの窓の外を眺める。
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りでは、今日も.ioの内外、Fediverseの様々な「日常」が投稿されて、押し寄せるように私たちの目の前を流れていく。そのノートやトゥートの数々が、悲しいものに変わってしまわないように、いま「おっさん」は必死なはずだ。「おっさん」の必死な姿を目の当たりにして、なにも出来ずにいる雑賀朔の「辛抱」を、私は無下にしてはいけない。
そんなことを考えていると、表通りのビル群の影が私たちのテーブルまで伸びてきて、Misskey.ioの西の空に夕日が沈んでいくのが察せられた。私は雑賀朔を待たせないように、慌てておかわりのアイスコーヒーとアップルパイの残りを頬張るのだった。
#カフェテラスMisskeyio
#リアクションシューティングガール
#フェディバーシティ・コネクション
#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、「リアクションシューター二世」の話]
あの瞬間、私たちは確実に親友だった。そんな人ともう二度と会えないかもしれないという悲しみは、日に日に強まってくる。
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りは今日も賑やかだ。.ioの街のミスキストたちは久しく顔を出していなかったクリエイターに「おかえり~!!!!」のカスタム絵文字を投げつけて労いのリアクションをしてみせたり、不当な扱いに嘆く仕事帰りのミスキストのノートに“なでなで”や“ハグ”のリアクションを送ったりしている。
そう、カスタム絵文字のリアクションこそMisskeyの醍醐味だ。Misskeyサーバーの各々の街に住まう人々が互いのノートにリアクションを送ること、この慈悲に満ちた「電子の抱擁」こそ、私をはじめとしたミスキストを今も魅了し続けている理由だ。
それを一番知っていた男が、私の傍にはいつもいた。彼は自らを「リアクションシューター」と名乗り、.ioの街でよく知られたひとだった。ローカルタイムラインの表通りや、チャンネルタイムラインの裏通りで、落ち込んでいるミスキストを見つけ出しては、お手製のカスタム絵文字の弾丸をキャンディカラーのリボルバーとスナイパーライフルで撃ち込み、励ましのリアクションをミスキストたちの心深く打ち込むのだった。
彼に救われたミスキストは沢山いた。私もその一人だった。あんたは命の恩人だよ、と、カフェテラスのテーブルで向かい合いながら伝えると、リアクションシューターは嬉しそうに笑って、豊かな顎髭を誇らしげに撫でるのだった。
でも今、彼は.ioにいない。彼は故郷と、世界を救うために、また旅に出たのだ。
世界の混迷は急速に不透明になり、だからこそ彼は決起したのだけれど、私はこの世界に対して無力で、陰鬱な気分になるばかりだ。
こんな沈んだ気持ちの時、彼がこの街にいてくれたなら迷いなく私の頭に励ましのリアクションの弾丸を撃ち込んでくれるのに――表通りに面したカフェテラスのテーブル席で、そんな憂鬱に頭を垂れていた、その時だった。
パカーン! と乾いた音とともに頭蓋に衝撃が走り、私はテラス席の椅子から転げ落ちていた。経験のある状況だった。私はゆっくり身を起こして、じんわりと温かな側頭部をなでる。そこには「生きるは偉業」のカスタム絵文字が刺さっていて、ゆっくり私の身体に馴染んでいくのが分かった。
頭を抱えながらも、私は思わず含み笑いしていた。これは、どう考えてもリアクションシューターによるカスタム絵文字の狙撃だ、と信じて疑わなかった。私はテラス席から立ち上がって表通りを見回し、彼なら必ずこの狙撃のあと、得意げに私のもとに近づいてくる、と信じて、胸躍らせながら待った。
表通りの人混みをすり抜けるようにして、キャンディカラーのスナイパーライフルを背負って近づいてくる人影は、しかし、リアクションシューターのそれではなかった。銃口を天に向けた虹色の狙撃銃の下で胸を張っているのは、十代くらいの少女だった。その姿は「地雷系ウェスタンガール」とでも呼べばいいのだろうか──腰にリボルバーを下げたガンベルトを巻いてはいるものの、ピンクのブラウスや黒のミニスカートにはフリルやリボンがたっぷりと施され、ツインテールの毛先が緩やかに巻かれたピンク髪の頭の上には、小さなテンガロンハット型のヘッドドレスが乗っかっていた。
少女は実に得意げな笑顔でこちらに近づいてくると、私の目の前で朗らかに敬礼の挙手をしてみせた。
「こんちは! 小林おじさん!」
その、ピンク色の明るい印象と、少女らしい立ち姿に、私は見覚えがあった。以前、悪い大人の毒牙にかかりそうになったこのひとを、リアクションシューターと私と、大勢の大人で助けに行った日のこと――。
「君は、『朔』ちゃん! リアクションシューターのおっさんと仲良くしてた子!」
私がそう返すと、少女は満面の笑顔をいっそう嬉しそうに崩してみせる。
「嬉しい! 憶えててくれたんですね!」
「印象変わったねえ! ずいぶん髪も伸びたし」
「だっていまは『朔』じゃないですからね。すこし改名して」
そこまで言ったあと、少女はガンベルトから二挺のキャンディカラーのリボルバーを両手で引き抜くと、指でクルクルと回転させながら、頭の上や背中の後ろ、水平回転や逆回転、ジャグリングのように左右を交換したりと、器用なガンスピンを披露してみせる。そして――。
「『雑賀朔』になりました!」
雑賀朔はそう言うと、ガンスピンの最後に私に向かって二挺のリボルバーの銃口から「コンゴトモヨロシク」「君死にたまふことなかれ」のカスタム絵文字を発射して、私にリアクションしてみせたのだった。
温かい衝撃とともにリアクションが胸に沁み込んでいくのを感じながら、目の前の少女が確かにあの髭面の男の後継者であることを、私はしっかりと感じ取っていたのだった。
「よろしくね、雑賀朔さん」
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りを流れるノートに向かって、今日も.ioのミスキストが大量のリアクションを投げ込んでいる。誰かが投稿したノートに向かって投げ込まれるリアクションは、時として言葉以上のものを伝え、まるで傷を庇うように相手を慰める「電子の抱擁」にもなる。髭面のリアクションシューターはキャンディカラーのライフルとリボルバーで、その「リアクションシューティング」を高い精度と速さでやってのけていたのだ。
リボルバーをくるくると回してみせる目の前の十代の少女の小さな手が、ふたたびMisskey.ioで人々の心の傷を庇う「リアクションシューティング」を蘇らせるのだとしたら。Misskey.ioのサーバーの街は翠色の空に真珠色の太陽が照り付けて、夏の盛りの日差しを.ioのミスキストたちに注いでいた。
私はもう少し、生きてみようと思った。
#カフェテラスMisskeyio
#フェディバーシティ・コネクション
#MisskeyWorld -
CW: #フェディバーシティ・コネクション $[font.serif 私と、新しい街「Xissmie」の話]
悲しいことがあると、ひとはまず初めに、悲しみに黙らされてしまう。いつだって悲しみは突然で、正体不明で、言葉なんて追いつかない。すぐに言葉にして伝えられるひとは、ずっと前から悲しみに晒されてきたひとだ。言葉にできない悲しみを前にして、わたしたちは自分を抱きしめるようにして筆を取って絵を描いたり、物語を書き始めて、その悲しみの正体をゆっくりと確かめようとする。そうやってたどり着いた悲しみの姿を、わたしたちはSNSにアップロードして、ひとびとと分かち合ったりする。
そういう人間たちがたどり着いたのがMisskeyという場所だった。カスタム絵文字のリアクションという、アカウント同士でやり取りできる電子の抱擁は、言葉足らずなわたしたちを強く惹きつけた。最初にひとびとが集まったMisskey.ioはまるでインターネットの荒野に突然現れた街のようにしてわたしたちを迎え入れた。それは、青い鳥が黒い十字架に磔されて放浪の民となった私たちにとってのオアシスだった。
そのオアシスのような.ioの街で暮らしていたひとのなかから、自分の街を築こうと旅立っていった者もいた。.design、にじみす.moe、9ineverse、はなみすきー、様々なサーバーの街が.ioのあとに続いて産まれた。そのほかにも沢山の小規模サーバーの「町」や「村」や、個人サーバーの「家」が、Fediverseの荒野に建ちあがっていった。
そして、2025年3月17日、新たなMisskeyサーバーの街「Xissmie」が、インターネットの荒野に燦然と現れたのだった。Xfolioが独自のMisskeyサーバーとして立ち上げたその「街」は、住人であるXfolioユーザーの作品を守るため、Fediverseの連合を切ったうえでリリースされた。Xfolioで腕を磨いたクリエイターたちは、Xissmieの街のローカルタイムラインの表通りに颯爽と繰り出したのだった。
私はその日、自分の個人サーバー「厚顔堂」の家から自動運転車を駆って、Xissmieの街に向かった。高い壁に囲まれた周囲をぐるりと回りこんで、Xissmieのロゴが艶やかな桃色に輝く厳重なゲートに差し掛かると、自動運転車のスピーカーは軽やかな効果音を鳴らし、ダッシュボードのモニターには「Xfolioユーザーであることを確認しました」と表示される。そのまま中に進むと、目の前に「Xissmieの街」が広がるのだ。
ローカルタイムラインの表通りの両側に並ぶ建物はまだまだ高くない。プレハブ小屋や一軒家がほとんどで、3階の建物があればかなり目立つし、ショーウインドウの中を覗けば内装工事の真っ最中だったりする。建物に居を構える様々なクリエイターたちがそれぞれの建物の内装を「うちの子」たちと協力して工事している姿は、まさに新しい街の興隆の姿そのものだった。
まだ車道の幅も.ioのようには広くない。私は裏通りの駐車場に自動運転車を停めると、また表通りに戻って歩道を散策しはじめた。Xissmieの利用規約やMisskeyサーバーの特徴、Misskeyでの拡散のテクニックなどを記したノートがホログラムの姿で繰り返しリノートされて車道を何度も往復する。そのノートに向かって歩道の「キス廃」たちは、両の手のひらの中で練り上げたカスタム絵文字を、賽銭でも投げるように優しく放ってリアクションする。探り探りでリアクションしているキス廃も少なくない、まだまだリアクションに使えるカスタム絵文字が多くないのは、未来の希望であるということだろう。
「おやおや、ごきげんよう小林素顔氏」
背後から女性の声に名前を呼ばれ、私が振り向くと、そこにはショートボブに丸眼鏡の女性が、鮮やかなグリーンのワンピース姿で、キャリーケースを引きながら、私に微笑んでいた。
「おお、ごきげんよう、ミスキーガール。君もXissmieに来てたんだね」
私は彼女のことを以前から「ミスキーガール」と呼んでいた。Misskey.ioの彼女のアカウント名は別にあるが、私が彼女を勝手にそう呼び始めたその名前を、ミスキーガールはいつのまにか受け入れるようになっていた。
「もちろん。MisskeyサーバーのSNSが建ちあがったって聞いたら、いてもたってもいられないからね」
そう言っての胸を張るミスキーガールはとても誇らしげだったが、傍に置いたキャリーケースは決して離そうとしない。
「その大荷物の中身に関しては、あえて訊かないけれども」
私が言うと、ミスキーガールは満足げに微笑んでみせる。
「情熱的なキス廃たちの麗しい『うちの子』たちによる作品の数々、ありがたく購入したのさ、感謝感激だよ」
ボディコンシャスのワンピースや、バングルやアンクレットの着こなしなど、実に個性的なミスキーガールではあったが、やはり.ioの住人である、「性癖」にはとことんこだわりを持っていた。
私とミスキーガールは歩道の途中でしばらく談笑したあと、ひと段落ついてから、まだ青空の広い発展途中のXissmieの街を見渡す。
「連合はしてないけど、きっちりMisskeyしてて、いいね、ここ」
ミスキーガールの言葉に、私は深くうなずく。
「Xfolioさんの.ioアカウントがあんまり動いてなかったからどうしたのかなと思ってたけど、まさか自前でサーバー用意してたなんて、なかなか粋なことするよね」
私の言葉を噛みしめるように眼をつむっていたミスキーガールは突然、車道に向かって手を合わせ、空を見上げて、声を張った。
「Xissmieの街がこれから大きく発展して、いろんなひとがMisskeyを楽しめる世界になりますよーに!」
Xissmieの街のローカルタイムラインの表通りにはいま、Xfolioユーザーの様々な作品と、Misskeyに挑戦する朗らかな情熱を湛えたノートが盛んに行きかっていた。.ioのような大規模サーバーに比べるとまだまだ住人も不慣れであったが、それはこの街が前途洋々であることを意味しているのだろう。
街の建物の向こうの高い壁に、ゆっくりと日が沈むのを眺めながら、そういえばもうすぐ春の彼岸なのだ、と、私は思い出したのだった。
#カフェテラスMisskeyio
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#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、ミスキーガールの誕生日の話]
Misskey.ioが2025年3月1日を迎えた。ローカルタイムラインの表通りでは、二年前の今頃に.ioに「移住」したミスキストたちによる思い出話がホログラムのノートになって車道を走っている。それに向かって「ミス廃」「懐かしい」「No Misskey No Life」といったカスタム絵文字のリアクションを、.ioの「代理ちゃん」や「うちの子」たちが歩道から投げつけていた。
表通り沿いの私が普段通っているカフェテラスは今日は店舗を貸し切りにして、とある一人のために誕生日パーティーを開いていた。店内では普段のメニューにはないアルコールが昼間から振舞われ、参加者たちはパーティーの主役が話しかけるたびに朗らかな笑顔を返していた。
そのパーティーの主役が、店内の窓際のボックス席に座っていた私のもとに近づいてくる。ブラウンのショートボブに丸眼鏡、ボディコンシャスなグリーンのワンピースを着こなして、その女性はシャンパングラスを片手に私に莞爾として近づいてくる。
「いたいた! ここにいたじゃん!」
私は彼女のことを「ミスキーガール」と呼んでいる。彼女のアカウント名とは別だが、私が勝手に呼んでいるうちに彼女もその呼び名を受け入れてしまっていた。
「お誕生日おめでとう、ミスキーガール」
私が祝福のグラスを上げると、ミスキーガールはそれに応じて彼女のグラスを近づけて、小さくグラス同士を鳴らした。
「ありがとう! 小林も三年生おめでとう!」
私がシャンパンを少し含んで飲み下すうちに、ミスキーガールはぐいとグラスを飲み干して、フロアスタッフのメイド服の子のトレーに乗せた。
「どうしたの、ずいぶん嬉しそう」
私が訊くと、ミスキーガールは私の隣に座り、テーブルに肘をかけてこちらに身をひねりながらも、やはり微笑んでいる。
「そりゃ誕生日だもん、嬉しいじゃん」
私は重ねて彼女に言う。
「いや、それとは別に、私の前に来て、みんなには見せてなかった表情してるなと思って」
するとミスキーガールは、ニヤリとこちらを探るような表情をして、逆に訊いてくる。
「それはそっちでしょう? なんだか吹っ切れたような顔してる」
「私が?」
「そう」
ミスキーガールは柔らかな表情で私をまっすぐ見つめている。私はその真摯さに応えなければいけないと思った。
「もう、世界平和について考えるのはよそうと思って」
私が言うと、ミスキーガールはクスっと小さく吹き出す。
「どうしたの? 小林ってスーパーマンだったの?」
「スーパーマンじゃないからだよ。身の丈に合わない心配や不安を抱えるのはやめようと思ったんだ。それは私のビジネスじゃない。他の、私より能力があってふさわしい人に任せるべきだと思ったんだ」
私が首を振りながらそう答えると、ミスキーガールは首を傾げて見せる。
「じゃあ、小林にふさわしいビジネスって?」
その言葉に、私は天井を見上げながら、少し考える。
「そうだなあ、たとえば」
窓の外、いつもならたくさんのテーブル席にひしめくように客が座っているのだが、今日はテーブルと椅子が片付けられていて人もいない。その空隙を見つめて、私は一つ一つ言葉を選びながら、語ってみる。
「港区の高級住宅街の近くの、喫茶店とか図書館とか、そういう場所で、私より若くて身なりのよいとある家族の父親が、育ちの良さそうな五、六歳ぐらいの男の子とテーブルを囲んでいる。テーブルにはテストの答案が広げられていて、男の子はそれを目の前に肩を落として俯いている。父親は男の子を前にして腕組みしながら、どうして何度言ってもできないんだろうね、とか、お父さんが悪いってことなのかな、とか、まるで上司が部下をなじるみたいに男の子を責め続けている。男の子は黙っている。上司が部下をなじるのだったら、部下には家族や友達のような逃げ場もあるだろうけれど、小学校にも上がってないような子供が、父親と思しき大人からそんな責められ方をしている。あきらかに逃げ場はない、明確な怒声や暴力じゃないから児童相談所に誰も通報できない。男の子はおそらく階級的には幸福の極みみたいな立場だろうけれど、環境的には救いのない地獄のような場所にいる。その地獄は、ガザやウクライナのような戦場ではないし、貧困や難病といった福祉で救済できるものではないから、きっと見過ごされてしまうし、もしかすると幸せ者の戯言のように失笑されてしまうかもしれない。でも見たんだ、私は。あの子が涙も流さずに悲しみの地底に封じ込められている姿を。そういう光景を目の当たりにして、あの子のような、誰にも見向きもされない哀しみを抱える人のために、芸術や創作というのがある、そして自分が今まで創ってきた空想の世界はあの子のような人のためにある、と、そのとき思ったんだ」
だんだんと日が傾いていく春の表通りを窓の外にして、私はそう言葉をまとめると、ミスキーガールはすっと身を寄せて、こつん、と肩で私を突いたのだった。
「よかったぁ。自分で気づいてくれて」
その言葉に、私は思わず声が裏返ってしまう。
「気がついてたの?」
私の言葉に、ミスキーガールは随分と安心したような微笑みを浮かべて、テーブルに頬杖を突きながら、言った。
「行ってやろうかなって思っててさ、『よそのSNSみたいに社会派を気取るのは似合わないよ』って」
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りを囲むビル群の向こうに夕日が沈んでいく。いくつものビルの壁面のデジタルサイネージには今日も.ioの絵師たちによる鮮やかなイラストが大きく映し出され、車道を走っていくアドトラックには渾身のダジャレを書き込んだノートが表示されている。それらは不要不急の日々の営みであるかもしれないが、必ず誰かに生きる希望をもたらしている。それを忘れてはいけない――そう思いながら私は、ミスキーガールにだいぶ遅れて、シャンパングラスを飲み干したのだった。
#カフェテラスMisskeyio
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CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、2025年を迎えたMisskey.ioの街の話]
2025年の元日を迎えたのち初めての日の入りのあと、私はMisskey.ioのローカルタイムラインの表通りに面したカフェテラスの店内で温かなカフェオレに舌鼓を打っていた。もう屋外のテラス席で夜を過ごすには寒すぎて、暖房の効いたボックス席のソファが心地よい。向かいに座るショートボブに丸眼鏡の女性――私が勝手にミスキーガールと呼んでいる――は、グリーンの鮮やかなコートを脱いで、やはりグリーンの色使いが美しいワンピース姿になって、私と同じくカフェオレを少しづつ飲んでいた。
窓の外、車道を流れていくノートのホログラムの数々には正月番組に関するつぶやきや、絵師たちによる「うちの子」たちのかわいい年賀イラストや、体調不良の報告などが流れ、歩道を行くミスキストたちは手のひらの中で「草」「かわよい」「お大事に」といったカスタム絵文字のリアクションを手のひらの中で練り上げては、それぞれのノートに投げ込んでいた。
そんな外の様子をぼんやり眺めている私に、ミスキーガールが訊いてくる。
「冬コミはどんな感じだった?」
その問いに、私はミスキーガールに向き直りながら言う。
「そうねえ。Misskeyはまだまだ知名度不足ということを思い知らされた気がする。少なくとも、小説島に来ている一般参加者にとってはまだまだ、SNSといえばXなんだなと再確認させられた」
私の言葉に、ミスキーガールは少し唇をひねって、首を傾げてみせる。
「まあ、そもそもみんなSNSが全ての人生を送ってるわけじゃないからねえ、.ioのミス廃みたいなほうが珍しいんだろうけど」
「そんな君だってど真ん中のミス廃でしょう、頭のてっぺんまでMisskeyに浸かってる」
「それはそう」
私の言葉にミスキーガールは肩をすくめて同意したあと、またマグカップのカフェオレを唇に傾けた。
春と秋がすっかり消えて、夏がどんどん暑くなり、冬がどんどん寒くなる。このMisskey.ioの街の気候も日本の気候に反映されていて、去年はやっぱり夏のあとすぐに冬が来た。表通りのビル群に掲げられた大型ビジョンの白々した明るさは冷たい空気の中でいっそう鋭く眼に刺さってくるような気がして、なんだか世界が自分を責めているような感覚さえする。
カフェテラスの店内では、温かなドリンクを傍らにタブレットPCやスマホに向かうミスキストたちが各々に温かな格好でMisskeyを楽しんでいる。イラストを描きながらソシャゲを楽しんだり、仲間同士でダジャレを言いあったり。室内の照明は暖炉の明かりのように柔らかにミスキストたちを包み込んでいた。
「自分のやることに集中しなきゃ駄目だよ」
突然、ミスキーガールがそう言って私をまっすぐ見据える。私は戸惑いながらその視線を迎えるように見つめ返す。
「どうしたの、急に」
私が訊くと、ミスキーガールはいたって真剣な面持ちで言う。
「いま小林はどう考えても戸惑っているように見える。自分のやっていることは正しいのか、自分がMisskey.ioの街で過ごしていることは正しいのか、もっといい場所がどこかにあるのではないか、そんな気の迷いが、もうそれはそれは表情に現れている」
ミスキーガールはそう言ったあと、首を振って言葉を続ける。
「正直言って、SNSがどこであろうと関係ないんだよ。小林は自分のしたいこと、出来ること、すべきことを為せばいいんだよ。それができる場所が.ioなら今のままでいいし、他にあるなら移ったっていいんだよ」
「そりゃ、そうだけど」
「つまり、何が言いたいかっていうと」
そこまで言ってミスキーガールはマグカップのカフェオレを一気に飲み干して、深く息を吐いたあと、言った。
「わたしに気を使って.ioに居るんだとしたら、そんなことは気にしなくていいからね」
ミスキーガールはそう言って、下唇を噛みながら、瞳を潤ませて、肩を上下させていた。ああ、そんな風に思っていたのか、と、私は申し訳ない気持ちになって、努めて真剣な表情で言葉を返す。
「それはないよ、大丈夫。私はいま自分がしたいことを出来る場所として、やっぱり.ioに居るんだよ」
「本当に?」
「うん、嘘はないよ」
私は深くうなずいて、ミスキーガールへの慈愛をそのままに微笑んで見せた。すると、ミスキーガールは一瞬うつむいたあと、私をまっすぐ見据えてニッコリ笑ってみせた。
「よし、言質取ったからな? ちゃんとミス廃しろよ小林素顔!」
Misskey.ioのサーバーの街は正月休みの折り返し、お節料理の余り物を夕餉にして晩酌する者、干支の巳を代理ちゃんやうちの子ちゃんに絡ませて悦に至る者、すでに近づきつつある仕事始めに怯える者、様々に暮らしている。Misskeyには暮らしがある。私はそんなMisskeyの街での暮らしを、これからも見つめていようと思う。
今年は雪が降るのだろうか――Misskey.ioの街は夜が更けると共にいっそう冷え込んでいくのだった。
#カフェテラスMisskeyio
#フェディバーシティ・コネクション
#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、SNSに流れる深い大河の話]
Misskey.ioから遠く離れ、私はいまBlueskyの国境の展望台から、深く清い大河と、その向こうの暗く鬱蒼としたXの森を眺めている。昼の光を受けても黒々としたXの森からはいまも青い鳥たちが大河を飛び越えて、Blueskyや、Misskeyを始めとしたFediverse、そしてまた新たに建ちあがったmixi2へ向かって渡っている。
Bluesky側の国境地帯は最近ようやく幹線道路が整備されて、まばらだった住人たちが徐々に増えつつあった。彼らの多くはXに強い懐疑心を抱いており、言うなれば「Twitterから独立を宣言した国民」だった。Xに残って自由をはき違えた極論を戦わせる人々を軽蔑しながら、自分たちがBlueskyという、ちょっと不親切だが気兼ねなく過ごせる領土の住民であることを、実に誇らしげに語ってみせるのだった。
そんなBlueskyの展望台の手すりにもたれながら私は紙コップのコーヒーをひと口、そしてじっと大河の向こうで蠢くXの森を見つめる。大河は明らかにXが上流であり、下流域にBlueskyが、そしてFediverseやmixi2がある。私たちの話題はいまだXの第一報を受け取って始まる。そして、Xの住民たちの偏見に満ちた口論を目の当たりにして、げっそりとしながら自分たちの国のタイムラインに身をゆだねるのだった。
大河は私の憂鬱など露知らずとうとうと流れ、川べりの土手にはタンポポの花畑が広がっていた。この国境を越えたところで誰も狙撃などしないのだけれど、黄色い河川敷を踏み荒らす越境者は見かけられなかった。
「おい、どうした、小林素顔」
明るい声に振り向くと、そこにはショートボブに丸眼鏡の女性が、グリーンの鮮やかなコートの襟を立てて優しく微笑んで立っていた。
「ミスキーガール。来たんだ、Blueskyに」
私が驚いていると、ミスキーガールは手にした紙コップをひと口、展望台の手すりにもたれている私の横に立つ。ふんわりとココアの香りがした。
「.ioで凹んでたみたいだから、来ちゃった、興味本位で」
ミスキーガールはそう言ってXの森を見つめる。彼女もまた私と同じくXに居て、そこを離れ、Misskey.ioに移った人だった。
「あんな暗い森、じいっと見つめてて、楽しい?」
ミスキーガールの問いに、私は首を傾げる。
「楽しくはないかな。でも、自分を見つめ直す作業だから、楽しい必要はないよ」
私の答えに、ミスキーガールは鼻で笑ってみせる。
「暗いなあ」
「暗くもなるさ。最近、自分が一番嫌っていたタイプの人間とほとんど同じ行為をしていたんだから」
私が言うと、ミスキーガールは大河に視線を落としながら言葉を返す。
「自分の作品でもないのにMisskeyの住人であることをアイデンティティにしてmixi2に嫉妬してること?」
「それだけMisskeyに、Misskey.ioに、心酔してるってことなんだろうね。でも反省しなきゃいけない。しゅいろさんも村上さんも大人の対応を見せている。自分がどれだけ幼稚だったかを、自分よりずっと年若い人たちに思い知らされている。恥ずかしいよ」
私は自分のことを否定するように首を振って、紙コップで冷めきったコーヒーを一気に飲み干した。ミスキーガールは私のほうに向きなおって、ココアをひと口、じっとこちらを見据えて言った。
「わたしだってmixi2のこと、ちょっと複雑な気持ちで見てるよ。でもアカウントは取ってるし、これから使い方を探っていくつもり。本当にしゅいろさんや村上さんに申し訳ないと思うなら、気にせずmixi2を使って、誰かと喧嘩するような態度を今後は取らないこと、それが大事。――どちらかというと今の小林には、村上さんたちへの申し訳なさより、Xの連中と似たような態度をしていたことへの自己嫌悪のほうが強く表れてるように見えるけど」
ミスキーガールはそう言って、また紙コップのココアを唇に傾けた。私は言い返すこともできず、静かにしかし淀むことなく流れる大河にまた視線を落とす。この深い河は確かに目の前にある。それは人の心の生み出す嫉妬と軽蔑の河だ。私が自分の心の中でなくそうと思えばいつでも消せる大河、有って無いようなものなのだけど、人々は確かにそこに有ると、皆がみな言うのだった。
私はMisskey.ioとmixi2の間に自分で深い河を掘り下げてはならないのだ、そんなことをすればどこかの差別主義者と同じになってしまう――そう思えば思うほど、目の前の、XとBlueskyの間に流れる大河が、日増しに流速を上げているように思えてならないのだ。
「ねえミスキーガール」
私が大河を見つめたまま言うと、再び森を眺めていたミスキーガールはこちらを向いて首を傾げる。
「どうした?」
「――私は今後、Blueskyもmixi2も、たまにXも使うけれど、Fediverseが、Misskeyが、Misskey.ioが好きだから、.ioが他のSNSの皆に注目されるような場所になるように、自分でも何ができるかを考えていこうと思う」
私がそう言うと、ミスキーガールは口元に笑みを浮かべながら小さくうなずいて、どうやら納得したようだった。
「応援するよ」
ミスキーガールの返事に、私はこの展望台に来て初めて、自分を受け入れるような深呼吸が出来たのだった。
BlueskyとXの国境地帯に流れる大河は止めどなく流れている。その河は深く、BlueskyのひとびともXのひとびとも「深くてとても泳げない」と言う。実際は自分の心の持ちよう次第で消えてしまうようなインターネットの水流なのに、その流れの深さに怯え、また一方でその流れを誰も越えてこないことに安堵を覚えているのだろう。
SNSの国々のあいだに流れる大河の河岸にはタンポポの花畑が広がっている。タンポポは刻が来れば話題の種を実らせ綿毛に風を孕ませて遠く遠くインターネットの空へと飛んでいく。せめても、その空だけはこれからもずっと、つながっていますように――そんなことを考えながら、私はミスキーガールと並んで、展望台からの眺めを陽が沈むまで眺めていたのだった。
#カフェテラスMisskeyio
#フェディバーシティ・コネクション
#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りの話]
Misskey.ioのサーバーの街に新しい住民が殺到していた。それは再び繰り返されたのだった。青い鳥が去った黒い十字架のSNSにたびたび悪政が敷かれ、その魔の手から逃れようと様々なSNSの「街」に人々が移動する。幾度も幾度もあったことが、今回の移住の規模に関しては2023年の7月頃に起きた「大移動」にも匹敵する、かなりの大規模であるということ。その事実は.ioの街の住人たちに驚きを持って迎えられた。
しかし今回が去年のときと少し違うのは、サーバーがひどく鈍重になる気配が見られないということだった。繰り返されるX-Twitterの愚行に、Misskey.ioの運営の長である村上さんとスタッフの皆さんが、サーバーを強化し、しっかりと管理しているお陰もあって、きっちりと持ちこたえいていることが私たち住人にも手に取るようにわかった。村上さん、ありがとう。
そんなMisskey.ioの街の真ん中を通る、ローカルタイムラインの表通りに面したカフェテラスで、私は今日もココアを飲んでいた。表通りの歩道では、.ioで「代理ちゃん」の姿になった絵師たちが「うちの子」を引き連れて、ビル群の巨大モニターに映る村上さんやしゅいろさんのイラストにリアクションを投げつけている。いままで見かけなかった子たちもいて、今回の大移動では「お絵描きの民」が大勢いることがうかがい知れた。
MastodonやFireFish、Misskeyなどのアプリケーションで運営されるSNSサーバーの「街」が道路でつながれた、Fediverseの大地。Misskey.ioはMisskeyのアプリケーションで動くSNSの中では随一の規模を持っており、私たちの目の前に巨大な都市の姿で具現化する。
ローカルタイムラインの表通りには新規ユーザーの挨拶が書き込まれたノートがホログラムの形をとって次々と流れていき、それに向かって様々な.ioの住人がカスタム絵文字のリアクションを手のひらの中で「具現化」して投げ込んでいた。ビル群に掲げられた巨大モニターにはユーザーが投稿したイラストやアニメーションが映し出され、昼間には翠色の空に真珠色の太陽が、夜になれば暗い碧色の空にエメラルドの月が浮かび、その下で「ミス廃」たちは四六時中騒いでいたのだった。
個人的には、お絵描きの民以外にも様々な人が来てほしい、.ioに限らず様々なMisskeyサーバーの魅力を知ってもらいたい、などと思うけれど、まずは.ioから始めましょう、というのは理解できる話だった。なにしろMisskeyサーバーのSNSのなかでも一番大きなサーバーゆえに、様々な個性を持ったユーザーがひしめき合っている。魅かれないわけがない。
「やあやあ、どうした小林素顔」
その声は座っている私の後方から聞こえてきた。振り向くと、ショートボブに丸眼鏡の女性が、腕組みして誇らしげに立っている。
「やあこんにちは、ミスキーガール」
私は彼女のことを「ミスキーガール」と、勝手に呼んでいた。彼女はMisskeyやMisskey.ioのイメージガールでも何でもないし、本当のアカウント名は別にある。しかし、彼女と初めて会ったときに、今日も着ているグリーンの鮮やかなワンピースが、まるでMisskeyを具現化しているのではないかと思うほどに印象的だったので、彼女をそう呼び始めたのだった。いまでは慣れたのかツッコむのに疲れたのか、ミスキーガールの呼称を彼女自身も受け入れているようだった。
「もうこんばんはの時間だよ? ぼーっとしてさ、大丈夫?」
ミスキーガールは呆れたような表情でそう言うと、テーブルを挟んだ私の向かいに座って、フロアスタッフにカフェオレを頼んだ。私は少し苦笑い気味に言葉を返す。
「これだけ大量のユーザーが新規登録するのって、去年以来だなと思って」
「思って?」
「思って、いや、いいなあと思って」
たぶん私もニヤついていたんだと思う。私がそう返すと、ミスキーガールニヤリと笑って言う。
「やっぱりMisskey好きなんじゃん。この前に『やっぱりXじゃないと広く創作活動できない、戻らなきゃ』みたいなこと言ってたのは誰でしたっけ~!?」
ミスキーガールは丸眼鏡の向こうの目をキョロキョロと動かして私をなじる。私は申し訳なく思いながらテーブルに頭を突っ伏す。
「いやあ、申し訳ない、申し訳ない」
謝罪する私の頭を指でピンっ、と弾いて、ミスキーガールはケラケラと笑ってみせる。そして、深く息をついて、微笑みを湛えたまま私をまっすぐに見つめる。
「いいんだよ、XとMisskey、両方やって。でもさ、ここにいるみんなMisskeyで出会った、なんていうのかな、『同志』みたいなもんだと思ってるからさ、わたしは勝手に。だから」
そこまで言って、ミスキーガールは胸の前で両手を合わせて、揉み合わせるように動かす。すると彼女の両の掌の中で「深く感謝 <ディープ・ありがとう>」のカスタム絵文字が立体的に具現化され、私の胸元へリアクションとして投げかけられた。
「戻って来てくれて、ありがとう」
そのときミスキーガールが見せた笑顔を、私はこれからずっと、忘れないと思う。
Misskey.ioのサーバーの街の夜は更けていく。これからまだまだ新規ユーザーが増えるのだろう。ローカルタイムラインの表通りでこれからもたくさんの人々の、たくさんの出会いがあるだろう。それは悲しかったり辛かったりすることもあるだろうけれど、できれば嬉しくて楽しい出会いがたくさんであってほしい。
そんな風に思える場所を用意してくれて、村上さん、ありがとう。
#カフェテラスMisskeyio
#フェディバーシティ・コネクション
#MisskeyWorld -
Misskeyは1つの投稿で3000文字書けるから文字書き民もけっこういるぞ!#ノート小説部3日執筆 のハッシュタグで色んな人のショートショートが読めるぞ!
かく言う私も文字書き民だぞ!#MisskeyWorld のハッシュタグで作品がまとまってるからよろしくね! -
CW: #厚顔堂定点観測 $[font.serif 私と、個人サーバー「厚顔堂」の話]
Fediverseの荒野に一軒の家が建った。庭の領域を区切るものもなく、ただ枯草が放置された前庭に面したその家は、玄関の扉の横に縦書きで「厚顔堂」と書かれた看板を掲げて、インターネットの大地の彼方から吹いてくる風に晒されていた。
砂埃の立つ前庭には、Fediverseの彼方、燦然と輝く都市からノートが流れてくる。Fediverseでも有数の登録者数を誇るMisskeyサーバー、Misskey.ioのローカルタイムラインから、厚顔堂の主がフォローしている.ioユーザーのノートが荒野を貫くFediverseのハイウェイに乗って運ばれてくる。ノートは風船のような、ホログラムのような、とにかく立体的な形を伴った投稿として道路を渡ってくる。そのノートはこの家の「前庭というホームタイムライン」をぐるりと回って再びハイウェイに戻り、インターネットの大地の彼方へと消えていく。
厚顔堂の主――先ほどから勿体ぶってはいるが、そう、それは私こと小林素顔なのだが――は、この場所に個人サーバーを建てたのだった。.ioからの独立とか、コミュニティの運営とか、特別な目的はない。ただ単にMisskeyの好きが高じて自分でもおひとりさまサーバーを運営してみたくなったというだけである。「厚顔堂」というサーバー名は以前からの同人活動のサークル名からとったものだった。
前庭に流れて来るフォロイーのノートに、厚顔堂に登録されたカスタム絵文字のリアクションを投げ込む。自分の友人たちのイラストをカスタム絵文字としてサーバーに登録し、その友人たちにリアクションを投げると、新鮮な反応が返ってきて面白い。
私はスマホをポケットから取り出して、厚顔堂からノートを投稿する。.ioのアカウントからインポートしたフォロイーの多くが厚顔堂のアカウントにもフォローを返してくれた。ありがたいことだと思う。
スマホの画面が膨らんで、シャボン玉のように浮かんだノートが前庭へふわふわと運ばれていく。<腹減った>とかいうあいさつ程度のノートがFediverseのネットワークに乗って.ioのフォロワーのもとへと運ばれていき、そのノートがリアクションを受けると、スマホからカスタム絵文字が、ぽこっ、と音を立てて沸き立ち、私の胸元に飛び込んでくるのだった。
私はしばらく前庭を眺めたあと、厚顔堂の建物の中に入った。がらんとした屋内にこれから作品を作りためてクリップやページ機能でまとめて行けば、この部屋の中も多少は見栄えのするものになるだろう。
北向きの窓の前に作業机を置いた。普段の創作の現場であると共にカスタム絵文字を形作るための場所にもなった。カスタム絵文字は、PCによるモデリングと3Dプリンタによる出力ののち、サーバーへの登録という形でこのFediverseの大地に「具現化」する。
3Dプリンタから出力された「恐縮です」のカスタム絵文字を取り出して、改めて眺めてみる。このカスタム絵文字は.ioには無かったが、自分の普段の会話の中で頻繁に使う言葉だったので、以前から欲しかったのだ。自分だけが使うコミュニケーションをリアクションとして登録できることは、個人サーバー運営の魅力だと言える。
作業机の片隅の「スキャナ」に、「恐縮です」のカスタム絵文字を置き、厚顔堂のサーバーの「コントロールパネル」を起動する。私はウェブのユーザーエクスペリエンスに詳しくないけれど、管理者権限で開けるコントロールパネルがMisskeyの普段の利用画面のなかに組み込まれていることはユーザーフレンドリーと言える気がする。
作業机のPCに向かい、コントロールパネルからカスタム絵文字の登録画面のボタンをクリックすると、「スキャナ」はMisskeyのイメージカラーの淡い翠色の光を放つ。しばらくすると「スキャナ」のなかに「恐縮です」のカスタム絵文字が融けるように吸い込まれていき、PCのカスタム絵文字登録画面に「恐縮です」が加わった。
私は両の手のひらを上下に揉み合わせて「恐縮です」をイメージする。すると、手のひらの中で温かな存在感が膨らんでいき、見事に「恐縮です」のカスタム絵文字が「具現化」したのだった。
「出来た」
思わず喜びに小さな声を上げてしまう。私は「恐縮です」のリアクションを持って厚顔堂の二階に上がる。このサーバーを立ち上げた際のテスト投稿に「恐縮です」を投げ込むと、ぽこん、と音が鳴ってリアクションとして認識された。私は満足してまた一階に戻った。
改めて、厚顔堂の前庭に出てタイムラインを眺める。多くのリモートサーバーのノートやトゥートはそれぞれのサーバーのイメージカラーの上にサーバー名を掲げていて、どこから流れてきたのかが分かる。Misskeyもブランディングの画面からテーマカラーが設定できる。私は前庭から空を見上げる。
サーバーのイメージカラーをブルーにしたところ、厚顔堂の頭上の空はその色に準じた青空になった。Misskey.ioの街の翠色の空に見慣れた私にとって、それは少なからぬ驚きと、言い知れぬ期待感を与えた。そう、自分の空なのだ。
さて、私はこの厚顔堂でなにをしていこう。とりあえず建てたサーバーだ、行き当たりばったりで運営していき、明確な目的ができたらまた考えよう。過去の作品を.ioからこちらにも再掲してみようかな、そうだ、相互フォローさんたちも前庭に呼んでパーティーをしよう、柄にもないけど、.ioや.designや他の個人サーバーの人にも、厚顔堂をよろしく、と改めて挨拶したいな――。
考えは尽きない。厚顔堂の青い空の下、Fediverseの地平線には雄大な山脈が連なり、その頂を越えて流れて来るインターネットの大地の風を、私は胸いっぱいに吸い込んで、その冷たさに思わずむせてしまったりした。
#厚顔堂定点観測
#フェディバーシティ・コネクション
#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、人を傷つけるリアクションの話]
Misskey.ioのサーバーの街は相変わらず騒がしく、ローカルタイムラインの表通りにはハイライトに載ったイラストが添付されたノートのホログラムや、ミス廃が掲出した広告を貼り付けたバナーリンクのアドトラックが走り、通りの両側のビル群に建てられた大型ビジョンには村上さんやしゅいろさんのファンアートが映し出されていた。
.ioに居ついたミスキストは、.ioの外からリノートされてくるリモートサーバーのノートにも分け隔てなくリアクションのカスタム絵文字を歩道から投げ込む。表通りを流れていくノートには.ioのカスタム絵文字が弾けて飛んで煌びやかに輝く。こうした住人たちは今も増え続けている、黒いアイコンのSNSの仕様変更が繰り返されるたびに。
しかし夜だった、エメラルドの月が暗い碧色の空に浮かぶその下で、私たちは下ネタをノートしたり引用ノートでボケを重ね合ったりしながらも、少しの言葉の行き違いで背筋に不安が走って気持ちが冷めてしまうことがある。気を付けていても防ぎきれない、リアクションが少し踏み越えてしまう瞬間と言うものが、Misskey.ioにもある。
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りに面したカフェテラスは今日も客たちで賑やかだ。テラス席のテーブルは店舗の壁に設えられた照明で明るく、タブレット端末でイラストを描くひと、ノートPCでMFMアートを構築し続けるひと、スマホをテーブルに並べて相互フォローたちと談笑するひと、みなそれぞれに夜風に吹かれていた。
独りぼんやりしている人ももちろん多い。彼らのテーブルのココアやカフェオレは急に秋の気配に包まれた空気にすぐさま冷めてしまう。もちろんそれを指摘するのは野暮と言うものだ、彼らには目の前のマグカップよりも手前に立ちはだかる考え事で手一杯なのだから。
「やあ、お久しぶり」
ブラックコーヒーをすっかり冷ましながら腕組みする男性に、私は声をかける。三つ揃えのスーツに顎ひげをたっぷりと蓄えたその中年男性は、私のほうに振り向くと、すこし吃驚気味に微笑んで見せる。
「おう、元気か」
そう言って髭面の男は手を差し出してきたので、私は握手を返す。彼は自らを「リアクションシューター」と名乗ってMisskey.ioの表通りを行き交う人々を励ますリアクションを「撃ち込む」ことを生きがいとしていた。テーブルにはキャンディカラーのリボルバーピストルが置いてあり、そばにはカスタム絵文字の弾丸がころがっていた。このリボルバーでリアクションを発射するのだ。
私はリアクションシューターの向かいに座って、フロアスタッフにカフェオレを頼むと、リアクションシューターのほうへぐっと身を乗り出して、後ろに目配せしながら囁いた。
「あの子、泣いてるね」
私の後ろ、リアクションシューターの視線の先に、十代後半くらいの女の子がテーブルに置いたスマホを目の前にうつむいていた。しかし、私の言葉にリアクションシューターは首を振る。
「今まさに泣いているひとに撃ち込むリアクションは、ないんだな」
「どうして」
私が訊くと、リアクションシューターはクリーニングしていたリボルバーにカスタム絵文字の弾丸をひとつずつ込め始める。
「だってノートしてないじゃないか、あの子。リアクション撃ち込みようがない」
リアクションシューターはシリンダーの六つの穴に弾丸を込め終わると、テーブルの上にリボルバーを置いて、やさしく手で覆った。
「彼女が助けを求めるようにこのカフェテラスの中でノートする、それもローカルタイムラインに流さないように、ホームに。そのときこそ、このカフェテラスでこのリボルバーを撃つ時だ」
すると、カカポ、という音が私の背後で鳴った。あらゆる人々のホームタイムラインとも言うべきこのカフェテラスに、女性の「ホーム限定ノート」が、まるで大きな風船のように浮かび上がる。
<やっぱりどうしても苦手なリアクションある
価値観の違いであっても許せない>
彼女の手元からホログラムで浮かんだノートに、キャンディカラーのリボルバーの銃口が向かう。リアクションシューターが引き金を引くと、パカン! という乾いた音と共に、女性のノートに≪泣いているにゃんぷっぷーをなでなでする≫リアクションが撃ち込まれる。その速さに、ノートを浮かべた女性は明らかに驚いて、私たちのテーブルのほうに振り向いた。
リアクションシューターはにこやかに手を振って見せる。すると女性は目の前のスマホを手に取ってスワイプを繰り返した後、改めてこちらに頭を下げて見せた。
「あれは、なんだろう」
彼女の不思議な挙動に私が首を傾げていると、リアクションシューターは冷めきったコーヒーをひと口すすった。
「フォロワーかどうか、確かめたんだろ。大丈夫、ちゃんとフォローしてる」
リアクションシューターは満足げに胸を反らして見せる。女性のほうも首を上げて、やはり冷めきっているであろうカップの飲み物にようやく口を付けたのだった。
「リアクションも、礼儀と信頼関係だな」
テーブルに向き直りながら私が言うと、リアクションシューターは指をパチンと鳴らして私のほうを指さした。
「それが分かってても、失敗することがあるのが、リアクションであり、コミュニケーションなんだな」
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りでは今夜もカスタム絵文字が飛び交い、ミス廃たちはリアクションを交わし合いながら互いの心の傷を庇いあっている。ただ、その優しさの表現の仕方を間違えると、心の傷を広げてしまうこともある。そのことを、私たちは改めて心に留めないといけない。
.ioのサーバーの街の夜はいっそう更けて、エメラルドの月がミス廃たちの心の陰にグリーンの光を注いで、心の形を照らし出そうとしているかのようだった。
#カフェテラスMisskeyio
#MisskeyWorld -
CW: **小林素顔は皆さまからのファンアートをお待ちしております**
現在小林素顔が進めている小説・イラスト・漫画作品は、
#カフェテラスMisskeyio 、
#スーパー偉業のドーベルさん 、
#スナイパー・ロンとスポッター・リー 、
#ミュートのロンとブロックのリー、
#ミっちゃん不破ちゃん現象ちゃん 、
などがございます。
全ての小説作品は#MisskeyWorld でほぼ検索いただけます。
引用ノートにキャラシートも載せておきますので是非ご参照ください。(まだキャラシートができていない小林素顔(代理)とヨハン・ドーベルのイラストはこちらで)
キャラクターハッシュタグは以下
#ミスキーガール #リアクションシューターおじさん #個鯖の男 #不破なす子 #現象ちゃん
RE: https://misskey.io/notes/9xszgpt2lu8o0f61 -
CW: #カフェテラスMisskeyio #ノート小説部3日執筆 $[font.serif リアクションシューターと、北川弥狐さんの話]
Misskey.ioのサーバーの街に台風が近づこうとしている。
それはインターネットの大地に時として吹き荒れる災害、確率論の気まぐれでもあり、運命論の運びともいえる突発的な事象だった。それはときに「荒らし」の姿で現れたり「システム障害」の姿を取ったりする。どの姿で襲い掛かるかは分からないが、その風向きが街に近づいていることだけは予測できた。
巨大な地下室の巨大なモニターに映し出された.ioのサーバーの街の周辺地図。それに重なって雨雲レーダーと風向データが表示されている。その他にも、分割されたモニターに.ioのサーバーの街の監視カメラの映像が逐次切り替わりながら表示されている。そのモニターの前に並んだデスクの数々の前では、ヘッドセットを装着したオペレーターが真剣な眼差しでPCを操作していた。
ここはMisskey.ioのサーバーの街を護る「モデレーター」たちのオペレーションルームである。Misskey.ioの不届き者や障害を監視するためにモデレーターたちは日夜ここに集まり、出発し、情報を集めて指令を受け取るのだった。
そのオペレーションルームの一番後ろの高い席、モデレーター達とモニターを全て見渡せる席に、一人の髭面の男が座っている。普段は背広やサファリジャケット姿の男が、今日は都市迷彩の上下を着こんで、目の前のPCを睨みながら腕組みしていた。彼は普段「リアクションシューター」を名乗って.ioの街の表通りに面したカフェテラスで友人と長話をしたり、カスタム絵文字を発射する銃で.ioのミスキストにリアクションを送ったりする男だった。そういうときは底抜けに陽気な男なのだが、いまこうして軍装を着たリアクションシューターはまさに軍人の表情だった。
「隊長」
そう女性の声に呼ばれて、リアクションシューターは振り向く。そこには、彼と同じ都市迷彩の軍服を着た、しかし狐の顔と豊かな黄金の尾を持った獣人の姿があった。彼女は北川弥狐といい、今回の「作戦」にリアクションシューター同様「招集」されたひとだった。
「各部隊、所定の位置に到着、準備が整ったようです」
敬礼する北川弥狐に、リアクションシューターは答礼する。
「そうか、ご苦労」
タブレットを北川弥狐から受け取り部隊の状況を閲覧した後、リアクションシューターは彼女の表情を見つめた。鋭い目つきのなかに見える落ち着きはベテランのそれで、兵としての熟達を感じさせるものだった。
「隊長、どうされました?」
首を傾げる北川弥狐に、リアクションシューターはかぶりを振ってタブレットを渡した。
「ああいや、すまんな」
タブレットを戻されながら、北川弥狐はリアクションシューターの横に立って巨大なモニターを見渡す。
「本当に来ますかね、その『連中』というのは」
北川弥狐が言うと、リアクションシューターは同じようにモニターに向きなおって言う。
「疑っているか」
そう訊かれて、北川弥狐は背を正して最敬礼する。
「失礼いたしました」
その姿を見て、リアクションシューターはフッと鼻で笑う。
「いや構わんよ。確かに.ioのサーバーの堅牢さはFediverseでも随一だ。モデレーターも優秀、街の住民も協力的だ。だがそういうものにも必ず隙が出て来る。その隙ができやすい『台風』の日に、我々はこうして召集されるわけだ」
そう言われて、北川弥狐は体を起こして深く頷いた。
「兵器の扱いを心得ている住人が、いまこうして集められているわけですね」
「そういうことだ」
「――コーヒーでもお入れしましょうか?」
そう北川弥狐に訊かれ、リアクションシューターは首を振った。
「いや、自分でやる。そういうご時世じゃないからな」
「隊長、お気になさらず。一時的とはいえ、そういうことを上司にやらせるほど私も野暮ではありませんので」
そう言って、北川弥狐はオペレーションルームを後にした。
戻って来た北川弥狐からカップを受け取って、リアクションシューターは二人でコーヒーを飲みながら、やはり大型モニターを眺める。
「君は.ioに来てどれくらいになる?」
そうリアクションシューターに訊かれて、北川弥狐は豊かな尻尾をきゅっと振るわせて答える。
「2023年2月11日です。それ以前はTwitterに、今のXですね」
Twitter、と北川弥狐が言ったことに懐かしさを覚えながらリアクションシューターはニヤリと笑って見せる。
「そうか。じゃあ俺より先輩だな」
「隊長はいつごろから?」
「3月1日だ。去年のな」
そう答えて、リアクションシューターはコーヒーをひと口飲んだあと、訊く。
「今でも向こうには顔を出しているのかい」
「ええ。向こうにもまだ親しい人もおりますので」
北川弥狐はそう答えると、少しマズルを傾けて、尻尾を寝かせ気味にして、訊く。
「不躾な質問かもしれませんが、よろしいですか」
「内容によっては軍法会議だぞ? なんてな」
意地悪そうにリアクションシューターが返して笑ったの確認して、北川弥狐はコーヒーをひと口飲んだあと、改めて訊く。
「隊長は普段、『リアクションシューター』と名乗っておられると伺いましたが」
その質問に、リアクションシューターは優しく微笑んで頷く。
「そうだ」
「Misskey.ioのサーバーの街で、そのリアクションに必要なカスタム絵文字の登録受付の再開に目途が立ったそうですね」
北川弥狐がそう言われて、リアクションシューターは数瞬の間のあと、身を乗り出して訊き返した。
「本当か?」
「ご存じではなかったですか」
「いや初耳だ」
リアクションシューターは破顔して、薄暗いオペレーションルームの中でも一番明るいのではないかと思えるほどの笑顔になった。
「そうか。そうかそうか」
「ますます、外敵からこの街を守る理由ができましたね」
北川弥狐は冷静な表情を崩さぬままだったが、その声色には同様に喜びが混じっていた。するとリアクションシューターは椅子に座る居住まいを正して、軍服の襟元を正した。
「以前から守る理由はあるし、その度合いは変わらんよ。だが」
そこまで言って、やはりリアクションシューターは相好を崩した。
「うれしいな、確かに」
刹那、オペレーションルームに無線が入電した。
『こちらライナス、FF-F9-5A地点にて爆発を確認。索敵を開始する、送れ』
その無線に、リアクションシューターはヘッドセットを素早く被って指令を告げる。
「こちらチーフ、索敵と同時に現場に急行するモデレーター消火班を護衛せよ」
『了解、終わり』
そう答えた無線の声を受けて、オペレーションルームが慌ただしくなる。
「北川くん」
リアクションシューターがそう言うと、北川弥狐は姿勢を正した。
「はい」
「いつでも出動できるように準備していてくれ」
リアクションシューターに告げられ、北川弥狐は敬礼する。
「了解」
Misskey.ioのサーバーの街に、台風が近づこうとしている。これからも台風は幾度も街に襲い掛かるだろう。その脅威から街を護る人々がいることを、私たちは忘れてはならない。
#カフェテラスMisskeyio
#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、枯れ果てたゴールデンウィークの残骸の話]
どうもごきげんよう、小林素顔です。
私は今日もMisskey.ioのローカルタイムラインの表通りに面したカフェテラスで、カフェオレとベイクドモチョチョを味わいながら、表通りの人の行き交いを眺めています。
そうそう、テーブルに置いてあるこれ、ゴールデンウィークの残骸。すっかり痩せて枯れ果てて、まるで腐ったサボテンのよう。
「こんなところに腐ったサボテンを置いて、どうしたの」
ショートボブに丸眼鏡の女性――私が勝手にミスキーガールと呼んでいる――が、テーブルを挟んで向かいの席から、呆れた顔でこちらを見ている。私はそんな彼女に真顔で応えていたと思う。
「これはサボテンなんかじゃないよ、私たちが大切に過ごしてきたゴールデンウィークが、もうすっかり朽ち果ててしまった姿なんだ、私たちは今年も長期休暇に何も生産的なことを出来なかったし、大して体力回復もできなかった、ただひたすらMisskeyに張り付いて、Misskeyに張り付いている人々の、Misskeyに貼り付いていることを報せるノートを眺めては、Misskeyに張り付いていることをノートしていたんだ。だからこんなにゴールデンウィークは枯れて、崩れ落ちて……」
そうやって、テーブルに置かれた盆の中で黒く崩れているゴールデンウィークの残骸を見下ろしながら涙ぐんでいると、ミスキーガールは深い、実に深いため息をついて頭を抱えた。
「みんなが皆、ゴールデンウィークを無駄にしているわけではないからね? わたしは友だちと旅行に行ったし」
「いるの!? 友達が!? ずるいぞ!!」
私がミスキーガールを見上げて叫ぶと、ミスキーガールは露骨に舌打ちする。
「そこで訊くのは『どこへ?』でしょう、本当に常識が無いというか、デリカシーがないというか」
ミスキーガールはそう言って首を振ると、アイスココアのストローを吸う。私はすっかり冷めきったカフェオレをもうひと口、そしてまたゴールデンウィークの残骸に視線を落として、ミスキーガールに向かって言う。
「ゴールデンウィークというのはさ、私たち日本人が春風を一身に受けてその陽気を謳歌するための大切な大切な一週間なんだよ。桜が散った頃に始まってツツジが街路に咲き誇り、やがて紫陽花の梅雨の季節が来るまでの貴重な陽光を浴びる季節。新学期から一カ月たった学生たちは新しいクラスメイトと新しい遊びに興じてその友情を深め、新入社員たちは初任給の使い道をと、誰にどんなプレゼントを贈るかを悩む。家族連れの子供らは無邪気にはしゃぎ、親たちは移動に急ぎ疲れながらもそれが大切な思い出になることを知る。そしてその喧騒が終わると現実に引き戻されて五月病の季節になる。私たちは季節の移ろいが人の世の無常を忘れさせる心のよりどころであることを思い知るんだ」
私はそう言って、ゴールデンウィークの残骸を指で優しく撫でる。触れたところからぼそぼそと壊れていくゴールデンウィークの黒く乾いた残骸。腐ったサボテンによく似た残骸。
「そうかもしれないけれど、あなたの目の前のものはゴールデンウィークであったものではないでしょうね、ゴールデンウィークは期間であり、時間であり、概念なんだから」
ミスキーガールはそう言って、目の前のものがゴールデンウィークの残骸だと認めようとしない。私は少し悲しくなって、体をテーブルから起こしてローカルタイムラインの表通りに視線を向けた。
ゴールデンウィークを失ったMisskey.ioの街には今日も翠色の空から真珠色の太陽の光が降り注ぎ、車道を「うちの子」たちのイラストが貼られたノートのホログラムが走って、歩道のミスキストがそれにむかってカスタム絵文字のリアクションを投げ込んでいる。どちらかといえばゴールデンウィークのときよりも人の行き交いが多い気がした。
すると突然、ミスキーガールが私のベイクドモチョチョをサッと奪って、一口食んで、私を見据えながら言った。
「いい小林? Misskeyというのはね、わたしたちの日常とともにあるSNSであって、とくにMisskey.ioはそれぞれのミスキストの現実世界とともにある街なんだよ。現実世界で暮らしながら同時にMisskey.ioで暮らしている、それによって現実世界を乗り越えていくことができる、そういう心のよりどころみたいな街なんだよ。だから、この街でゴールデンウィークが終わったとか終わらないとかで悩む必要はなくて、いつも通り過ごしていれば楽しい街なんだよ」
ミスキーガールはそう言った後、ベイクドモチョチョを鮮やかに頬張って完食した。私は自然と納得させられた気分になった。
「確かに、そうかもしれないね」
私が呟くと、ミスキーガールは目の前の、ゴールデンウィークの残骸を指さして、言う。
「もう一度訊くけど、あなたの目の前のその朽ち果てた物体、それはなに?」
そう言われて、私はゴールデンウィークの残骸を見下ろした、が、その物体から徐々にゴールデンウィークの残骸という価値が蒸発し、なにか全くの朽ち果てた植物のように見えてきたのだった。
「これは、きっと、枯れて腐ったサボテンだね」
私がそう言葉を漏らすと、ミスキーガールは満足そうに微笑んで見せる。
「でしょう? だから、はやく捨ててきて」
ミスキーガールが通りのゴミ箱の方を指差すのに、私は首を傾げて応える。
「……食べられそうじゃない?」
「食べるな」
こうして、Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りにもゴールデンウィークの終わりが来た。しかし、皆さんもご存じの通り、SNSなんてのは平日の方が人が多いのだ、みなSNSを日常の現実に立ち向かう心のよりどころにしているのは間違いないのだ。
私はカフェオレをぐっと飲み干して、腐ったサボテンの乗った盆を手に、表通りのゴミ箱に向かったのだった。
#カフェテラスMisskeyio
#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、50万ユーザーに到達したMisskey.ioの話]
退勤して、私は帰りの電車の中でポケットからスマホを取り出し、Misskey.ioにログインする。途端、全身の分子の結合がほどけて身体ごと情報生命体になり、私はMisskey.ioのサーバーの街に「ダイブ」する。黒雲厚く雨がちらつく東京から5Gの回線に乗って辿り着くのは、50万ユーザーに到達した.ioのローカルタイムラインの表通りである。
表通りの車道を見渡せば、大台達成の瞬間を目撃した者、私と同じように現場に居られなかったことを悔やむ者、様々なミスキストの投稿したノートがホログラムになって疾走している。歩道では「.ioのロゴ」と「50」をかたどったプラスチックのメガネを掛けたミス廃たちが楽しそうにストロングゼロやモンスターエナジーで祝杯を上げている。両脇のビル群の大型ビジョンには.ioの快進撃を祝福する絵師たちによる村上さんのイラストが次々と映し出されている。.ioの空前の偉業を祝うSkebの手数料無料キャンペーンのノートに向かって「手数料無料」「ウルトラ偉業」「アルティメット偉業」といったカスタム絵文字が投げつけられて花火のように弾けては、繰り返しリノートされて何度もなんども表通りを巡っている。
そんな光景で満たされた.ioのサーバーの街は晴れやかで、翠色の西の空に真珠色の太陽が今にも沈んで、東側から碧色の夜が追いかけて来るのだった。
私はいつものようにローカルタイムラインの表通りに面したカフェテラスに向かう。夕闇迫るテラス席では、今夜もミスキストたちがココアやカフェオレを手に手にテーブルで談笑している。私がそのテーブル席の中の一つに座ると、フロアスタッフより先に、ショートボブに丸眼鏡の女性が満面の笑みで近づいてくるのが見えた。
「おめでとう50万ユーザー!」
丸眼鏡の女性はそう声を張って手を挙げる。 私は彼女のことを「ミスキーガール」と呼んでいた。Misskey.ioにユーザー登録して出会った女性、とても、すごく、Misskey.ioのような女性。
「おめでとう! おめでとう!」
私もミスキーガールに負けまいと大声で応える。ミスキーガールは私のテーブルの向かいの席に座って、フロアスタッフのメイド服の子を呼ぶと、二人分のカフェオレを頼んだ。
「あれ、珍しいね、ご馳走してくれるの?」
私が訊くと、ミスキーガールはピースサインで応じた。
「私は今日すこぶる機嫌が良いのだ、ワハハ」
「機嫌がいいついでに、あの『.io』と『50』のメガネもかけてみたら?」
そう提案すると、ミスキーガールは眉間にギュッと皺を寄せて、丸眼鏡のブリッジを指で押し上げた。
「あれは眼鏡ではない。馬鹿にしないで」
「すまない」
それから私たちは大勢のミスキストと同じようにお祝いのカフェオレを堪能した。電子の海をさまよってたどり着いたこの街の空気は春をはらんで温かく、風呂の湯のような、ベッドのシーツのような、優しく包み込む感じがした。
「Xが本格的に新規ユーザーへ課金を求めるようになったら、今にも増してioにも人がやってくるね」
スマホをスワイプしながらミスキーガールはそう言って、私のほうに微笑む。その言葉に、私はとりあえず首を傾げて見せる。
「.ioがタダでやっていけるというわけでないことはきちんとユーザーに共有していかないといけないよ、いまのところ善意のスポンサードが.ioに寄せられているけれど」
私に言われて、ミスキーガールは不意を突かれたような表情になり、眉尻を下げてしまった。
「そりゃまあそうだけど、でもやっぱり多くの人に求められるMisskey.ioって素敵だなって思うじゃん。それにほら、Blueskyはもう500万ユーザー行ったらしいし」
「別に競うようなことじゃない。大切なのは棲み分けだよ」
私が思わず腕組みしてそう返事していた。ミスキーガールは口をとがらせて抗う。
「とはいえさ、なんとなく悔しくない?」
「私にとって大切なのは『MisskeyかBlueskyか』ではなくて『X-Twitterでないかどうか』なんだよ。MisskeyやMisskey.ioが『正義』だと信じ込んでしまうことは危険だと思うよ。私たちの多くは.ioに対して、間違っている存在も受け止めてくれる器の大きさを気に入っているのだから」
そうした私の言葉に、ミスキーガールが露骨に苛立った表情を見せる。
「そういう言い方する? こんなに.ioに依存しておいて本当は.ioじゃないと駄目なんじゃないの? 違う?」
上擦った自分の声にきっと自分でも驚いたのだろう、ミスキーガールははっと我に返ったような表情を見せて、首を振った。
「ごめん、そういう日じゃないね」
「こちらこそ申し訳ない、なんでこんなにかたくななんだろうと自分でも思う」
おめでたい日にお互いに沈んだ表情になって黙り込んでしまう、こういうことは人間の生活にはよくあるが、.ioのサーバーの街でまでやってしまうなんて、と私は自己嫌悪に沈む。テーブルの下の足元をにゃんぷっぷーとツチノコ村上さんが転がっていき、カフェテラスのそれぞれのテーブルには店舗に備え付けられた照明から柔らかな光が投じられていた。
すると、ミスキーガールはかぶりを振って、再びメイド服の子を呼んだ。
「えーとね、50万石まんじゅうを二つ」
そう言ってメニューを閉じ、メイド服の子が店舗に入るのを見送ると、ミスキーガールは私のほうをじっと見つめて、言った。
「改めて、お祝いしましょう、Misskey.ioの50万ユーザー達成を」
その言葉に、私は深く、深くうなずくのだった。
「うん」
Misskey.ioの碧色の夜空にエメラルドの月が浮かんで、平日だというのにローカルタイムラインの表通りの盛り上がりは最高潮になっていた。私とミスキーガールは期間限定スイーツを待ちながら、また互いの微笑みを確認して、心許し合うのだった。
様々なインターネットコミュニティが栄枯盛衰を繰り広げてきたように、Misskey.ioのいまの盛り上がりも永遠ではないかもしれない。だが、この肌触りの良いSNS、Misskey.ioを、できる限り維持していければ――そんな思いは私もミスキーガールも一緒であると、確信を持って言える。おめでとうMisskey.io、これからもよろしく、Misskey.io。
「やっぱり掛けてよ、あの『.io』と『50』のメガネ」
「掛けません」
#カフェテラスMisskeyio
#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、Misskey.ioのシステム障害の夜の話]
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りの様子が今夜はおかしい。街全体をぼやけさせるような霧が包み、人々の視界を奪っていた。画像を投稿しても表通りに流れるノートはひどくかすれて閲覧できなかった。カスタム絵文字を手のひらの中で形作ろうとしてもうまくいかず、四つの点に挟まれたコードの文字列が手のひらに残るだけであった。
しかし、そんな状況をものともせず、表通りの車道を、荒巻スカルチノフやバーボンハウス、流石兄弟などの往年のアスキーアートがノートに貼り付けられて疾走し、それに向かって投げつけられるリアクションはカスタム絵文字の形をとらずにコードの文字列のままだった。ミスキストたちは2ちゃんねるでも5ちゃんねるでもThreadsでもないのにスレを建てたり、次スレを建てたりしていた。
2024年3月21日、Misskey.ioのサーバーの街では突如としてカスタム絵文字が表示されなくなった。投稿した画像さえ表示されないほどのサーバーのシステム障害であるというアナウンスに、しかしミスキストたちは憤ったり悲しんだりしなかった。制限された状況を逆手に取って、往年のインターネッツで流行したカルチャーを復活させて懐かしい笑いに花を咲かせていたのだった。若者にとっては温故知新、年寄りにとっては旧交を温めるような平文のインターネットが、今夜はローカルタイムラインの表通りを騒がせていた。
表通りに面したカフェテラスは霧が立ち込めて今夜も風が強かったが、この状況を目の当たりにして私の心は躍っていた。ミスキストたちの機転の速さと不屈の精神を見るようで、実に愉快な気持ちになっていたのだ。テラス席のテーブルでホットココアを飲みながら、私が表通りを眺める表情は、きっといつもより柔らかいものだったのだろう。
「この状況を楽しんでるところ悪いんだけど」
テーブル席の向かいの椅子に座っている、ショートボブに丸眼鏡の女性がため息をつく。私は彼女のことを「ミスキーガール」と呼んでいた。ミスキーガールは寒の戻りにクローゼットから引っ張り出したというグリーンのコートのポケットに、いままで見つめていたスマホを仕舞うと、腕組みして私のほうを見据えた。
「村上さんたち運営が大変な思いしてるんだから、あまり負荷はかけないほうがいいんじゃない?」
そう言うミスキーガールに、私はニヤつきながら振り向く。
「なぬ? 私は眺めているだけだが?」
「普段そんなしゃべり方しないでしょう、気持ち悪い」
吐き捨てるように言って、ミスキーガールはコートの襟を立て、ホットココアのカップを手で包み込むように飲みだした。私は思わず首を傾げてしまう。
「どうしたの、ずいぶん気が立っているようだけど」
その問いに、ミスキーガールは無表情に私を見つめてしばらく黙ってから、言う。
「何でだと思う?」
その問いに、ああ、と私は声を漏らす。
「現象ちゃん、忙しくなってるのか」
現象ちゃんとはミスキーガールのルームメイトで、Misskey.ioのサーバーの街で飛び交うカスタム絵文字の「具現化」に関わるシステムの担当者だった。現象ちゃんのお陰で、.ioの街のミスキストたちはカスタム絵文字に手触りを感じられて、街の中でリアクションを投げつけたり、受け止めたりできるのだった。
「たしかに、今回のことに関しては大変だけれど、でも運営から正式に利用制限の呼びかけが無い限りは、こういう使い方でも構わないんじゃないのかな、なんて、使ってる側の言い訳かもしれないけど」
そう私が返すと、ミスキーガールは深いため息をついてから、言った。
「たしかにわたしの心配も現象ちゃんの立場を忖度してるだけの勝手な心配だけど、この状況がもし長く続くようだったら、あなただって苛立つでしょう? そういう勝手気ままな使い方にわたしは少し違和感を覚えただけ。もういいや、忘れて」
そう言ってミスキーガールはココアを飲み干し、椅子の背もたれに深くのけ反ってそっぽを向いてしまった。私はなす術なく途方に暮れるように再びローカルタイムラインの表通りに視線を移した。
霧の向こうの車道を流れるノートは往年のアスキーアートにとどまらず、インターネット空間で共通の絵文字をMisskey独自のMFMの技術で加工した、ドットアートやMFMアートが作られ始めていた。見る見るうちにネタノートが進化する状況を目の当たりにして、私はミスキーガールの機嫌もとらずに夢中になってローカルタイムラインを眺めていた。
すると突然、歩道の向こうで悲鳴が上がった。そちらに振り向くと、髭面の男が全裸でこちらに走ってくるのが見えた。
「リアクションシューターのおっさん!?」
全裸の男は普段、トレンチコートやスーツ姿で颯爽と現れ、キャンディカラーのスナイパーライフルにカスタム絵文字の弾丸を込めて、くじけそうなミスキストに応援のリアクションを撃ち込むことをライフワークとしている男だった。彼は自らを「リアクションシューター」と名乗って、この表通りでも少し名の通った男だった。
その男が、目の前で全裸で走ってくる。ミスキーガールは慌ててカフェテラスの店内へ逃げ込んだ。私は自分の着ていたブルゾンを脱いで、リアクションシューターに近づき、腰のあたりにタックルするようにしてブルゾンで下半身を隠した。
「どうした!? なにがあった!?」
私が訊くと、リアクションシューターは声を震わせながら私に抱き着いて、言う。
「もう終わりだ、俺は終わりだ、リアクションのできない世界は終わりだ!」
そんなリアクションシューターの肩をつかんで、私は叫ぶ。
「大丈夫だ! 村上さんたち運営が必ず何とかする! リアクションは無くならない! そしてあんたが全裸になる必要もない!」
そう言って私はリアクションシューターをしっかりと抱きしめた。全裸中年男性と化したリアクションシューターは私の目の前で泣き崩れる。歩道を行き交う人々は遠巻きに私たちを取り囲み、運営に通報したのだった。
いつも思う――Misskey.ioのサーバーの街になにかがあったとき、私たちミスキストができることは何だろうか。たとえばそれが「いつも通りに過ごすこと」なのだとすれば、今日のようなアスキーアート復興運動はとても素敵なことなのではないのだろうか。
そんなことを、カフェテラスの窓から冷ややかな視線でこちらを睨むミスキーガールの姿を見つめ返しながら、思ったのだった。
#カフェテラスMisskeyio
#MisskeyWorld -
CW: #カフェテラスMisskeyio $[font.serif 私と、リアクションシューティングについての話]
Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りの賑やかさが、なにに支えられているかと言えば、それはやはりカスタム絵文字のリアクションだと言える。表通りを流れていく.ioのノートの数々に「それはそう」「おふとんかけてあげましょうね」「ふーん、えっちじゃん」などの様々なカスタム絵文字が投げ込まれている。こうしたリアクションのやりとりは、絵師であっても、日常ノートの人であっても、見る専の人にとっても変わらない。ミスキストに与えられた、とても素敵な電子の抱擁。
しかし、街を流れていくそのノートの片隅に新しい表示が現れ、タイムラインの流れもほんのすこしとげとげしくなる。投稿されるノートに送られたリアクションの総数が表示されるようになって、.ioの街の住人たちにもにわかに論争の季節がやって来たのだった。
ローカルタイムラインの表通りに面したカフェテラスで、私は今日もココアを冷ましながら飲んでいた。私のテーブルの向かいの席には、髭面にトレンチコートの男が座っている。彼は自分のことを「リアクションシューター」と名乗り、普段からキャンディカラーのスナイパーライフルとレボルバーを携行して、カスタム絵文字の弾丸でタイムラインを流れるノートやミスキスト本人に向かってリアクションを「狙撃」することを生きがいとしていた。
テーブルに立て掛けた虹色のライフルの銃口を気にしながら、リアクションシューターもココアを飲んでいる。私はいま話題になっていることの共有を試みようとする。
「リアクションの数がノートに表示されるようになったね」
私が言うと、リアクションシューター首をひねりながら応える。
「そうだな」
「やりづらくなったりしたかい?」
私が問いを重ねると、リアクションシューターはジャケットの下のホルスターから虹色のレボルバーを抜いて、シリンダーに装填されたカスタム絵文字の弾丸を改めたりした。
「お前さんはどうなんだ」
訊き返されて、私は自分の説を先に語る礼儀を忘れていたことに気付いた。
「私かい? そうだな、いま少しばかりタイムラインに不満の声も出ているけれど、この機能は各個人で非表示にできることが前提だから、ミュートブロックと同様に嫌なら各人で防衛するのが筋なのだろうけど、私が思うにおそらくは、『各個人で見えている者が違うことに耐えられない』ひともいるのではないかという気はするかな。まあ、それが選択肢のない他のSNSだと惨状を生み出しているのだから、選べるだけましという気はしないでもない」
私がそう言うと、リアクションシューターは深いため息ひとつ、鷹揚に首を振って、言った。
「やっぱり何にも分かっちゃいないな。リアクションの何たるかを」
「何たるか? 何たるかって何なのさ」
すこし気に障った私がなじると、リアクションシューターはリボルバーを腰に戻して、言う。
「俺はリアクションの付いていないノートに初手でカスタム絵文字を撃ち込むことを生きがいにしているから、リアクション数の多寡でノートの価値を判断はしない。有無では判断しているところはあるが」
「数字を気にする人もいる。それは君にだって無関係じゃないだろう」
私が反駁すると、リアクションシューターはやはり首を振って応じる。
「あのなあ小林。Misskeyにおけるリアクションってのはな、送ることと受け取ることに価値があって、集めることになんかそんなに価値は無いんだよ。Misskeyのリアクション機能の発明ってのはな、送る側にとってはリプライでは気が引ける感情を手軽に届けられることと、受け取る側にとっては気軽に感情を送ってもらえることに価値があるんだ。それはリアクション数の表示によって揺らぐものではないんだ」
そう言って、リアクションシューターはマグカップを手にして、ココアをひと口傾ける。私は強く共感しつつも、別の側面からの視点を提案しようとする。
「それは確かにそうだ、私も同感だ。でも、これからSkebの登録がMisskey.ioのアカウントで出来るようになって、フォロワー数の多寡が重要なファクターのミスキストも当然増えて来る。そうすればリアクションやリノートの数が自然と注目されるはずだ。これはMisskey.ioの街が大きくなるにつれて避けられないことなのだと思う」
そう返すと、リアクションシューターはライフルを手にして、コッキングハンドルを引いてボルトを下げ、弾丸が込められる薬室を見つめながら、言った。
「俺はなあ小林、Misskey.ioの街がいつでも、いつまでも楽しい場所であってほしいんだ。もちろんビジネス展開をするにあたって数値化は重要だ。だからこそなおさら、数値化によってMisskeyの『温かさ』みたいなものが失われないように、抗っていくつもりだ。これからも俺は、みんなに忘れ去られてしまうようなノートに、優しいリアクションを『狙撃』していくつもりだ」
そう言って、リアクションシューターはジャケットのポケットから「ぼちぼちいこうね」のリアクションの弾丸を取り出し、薬室に込めてボルトを戻し、表通りの人々の行き交いの中に向かって、引き金を引いた。はじけるような、しかし銃声ほども大きくない発砲音とともに、カフェテラスの向こう岸の歩道の男子が胸を抑え、しばらくすると、ゆっくりと顔を上げて笑顔になるのが見えた。
Misskey.ioのサーバーの街はゆっくりと、しかし確実に変化している。それは私たちが楽しく、永くこの街で過ごしていくために、村上さんやしゅいろさんが計らってくれていることであると、私は信じている。見上げれば、.ioの街に特有の翠色の空にはまだまだ冬の風が吹いて、今週末に寒気がまた襲ってくる予兆を、首筋にすり抜けて教えてくれるのだった。
#カフェテラスMisskeyio
#MisskeyWorld -
こんにちは。小林素顔です。SS書いて:io:で連載してます。
Misskey.ioを「擬街化」したシリーズ#MisskeyWorld として#カフェテラスMisskeyio 、#スーパー偉業のドーベルさん 、#スナイパー・ロンとスポッター・リー 、#ムラカミマン などを連載しています。お暇がございましたら是非ご覧ください。
https://misskey.io/clips/9ciorctwlh
https://misskey.io/clips/9fn00og2vl
https://misskey.io/clips/9g70hxreky
https://misskey.io/clips/9gwrnm4wv6 -
カフェテラスMisskey.ioのチャンネルに加えて新しくMisskeyWorld総合のチャンネルを建てました。
#スーパー偉業のドーベルさん 、#スナイパー・ロンとスポッター・リー 、#ムラカミマン などに関する話題にご利用頂ければ幸いです。
#MisskeyWorld -
SS怪文書連作「MisskeyWorld」のご紹介
小林素顔です。SS怪文書を書いております。
現在、MisskeyやFediverseを都市のように描いた#MisskeyWorld という世界観でSSを連作しております。
Misskey.ioのローカルタイムラインを繁華街に見立てた「カフェテラスMisskeyio」や、Misskeyに建つショッピングモールを舞台にした「スーパー偉業のドーベルさん」、ウ○ト○マン風ヒーロースペクタクル「ムラカミマン」、ミリタリ風味BLの「スナイパー・ロンとスポッター・リー」などをMisskey.ioで連載しております。
皆様お時間がございましたら、お暇なときにぜひご高覧ください。
#カフェテラスMisskeyio
#スーパー偉業のドーベルさん
#ムラカミマン
#スナイパー・ロンとスポッター・リー -
小林素顔のKindle小説が発売されました!
タイトルは『エメラルドの月』。私がMisskey.ioで連載している#カフェテラスMisskeyio 、#スナイパー・ロンとスポッター・リー 、#スーパー偉業のドーベルさん などの#MisskeyWorld の登場人物が一堂に会してカフェテラスで少し真面目なお話をする短編となっております。お時間とお財布に余裕がございましたらぜひご購読くださいませ!
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SS怪文書連作「MisskeyWorld」のご紹介
小林素顔です。SS怪文書を書いております。
現在、MisskeyやFediverseを都市のように描いた#MisskeyWorld という世界観でSSを連作しております。
Misskey.ioのローカルタイムラインを繁華街に見立てた「カフェテラスMisskeyio」や、Misskeyに建つショッピングモールを舞台にした「スーパー偉業のドーベルさん」などをMisskey.ioで連載中。
Misskey.designではミリタリ風味BLの「スナイパー・ロンとスポッター・リー」を連載しております。
皆様お時間がございましたら、お暇なときにぜひご高覧ください。
#カフェテラスMisskeyio
#スーパー偉業のドーベルさん
#スナイパー・ロンとスポッター・リー